1300年の歴史のトップランナー 枡業界の常識を越える挑戦で伝統を繋ぐ

古くは奈良時代頃から体積を計るための道具として使われてきた「枡」。この枡の材料となるのがヒノキです。中でも、木曽ヒノキや東濃ヒノキなどの産地が周辺にあった岐阜県大垣市は、昔から枡の生産が盛んでした。現在でも全国生産量の約80%を占めていると言われています。

そんな大垣に本社を構える創業69年の「有限会社大橋量器」。3代目を継ぐ大橋博行社長は、業界の枠を超えた枡の商品提案で新たな活路を見いだしています。

2018年11月には、飛騨市古川で銘酒「蓬莱」を醸造する渡辺酒造店とコラボレーションし、業界初となる“枡の内装材”を取り入れた「MASU BAR蓬莱」を岐阜横丁ビル(岐阜県岐阜市)にオープン。木材大好き森ワクも「それは気になりマス!」ということで、需要が低迷する枡に新たな価値を提案する取り組みについて話を伺ってきました!

大橋量器の代表を務める大橋博行さん

代表取締役の大橋博行さん

-「MASU BAR蓬莱」はどのようなきっかけでコラボレーションされたのですか?

「枡の内装材の提案営業をしていたときに、岐阜横丁ビルのオーナーさんに出会い採用していただきました。出店パートナーを当社で探す必要があったので、以前からご縁のあった渡辺酒造さんに相談したところ、出店をご快諾いただき実現しました。」

岐阜横丁内観

岐阜横丁の内観。この奥にMASU BARが!

-業界初となる枡の内装材ですが周囲の評価はいかがですか?

「雰囲気がすごくいいねと好評をいただいています。枡の材料であるヒノキは白木なので心が落ち着くのかもしれませんね。」

MASUBARの壁

-枡を内装材に使うというのは斬新なアイディアだと思いますが、いつ頃から考えられていたのですか?

「実はしばらく前から構想はありました。ニューヨークのギフトフェアに出展したときに、イギリスのレストランデザイナーから14,000個もの注文があったんです。

どんな用途かわからぬまま発送したのですが、その後写真が送られてきて驚きました。レストランの吹き抜けにばーっと枡が積み上げられ非常にシンボリックに使われていたのです。

それを見て『かっちょいいじゃん!』と。海外でそういったインテリアや内装に活用してもらう事例が少しずつ出てきて、これはいつか直接自分たちで提案したいなと思っていました。」

-実現に向けて苦労された点はありますか?

「販路開拓です。建築業界というまったく異業種へのアプローチですのでまだまだ手探り状態です。今は内装材のカタログに掲載してもらえるよう社外のデザイナーさんと相談しながら検討をしています。」

-今回は飲食店でしたが、その他どのような活用を考えていますか?

「一番の夢はGoogleのようなおしゃれな会社の内装に使ってもらうこと!バイオフィリックという考え方があって、自然の素材がオフィスにあると作業効率が良くなるらしいんです。単なる内装材としてだけでなく、木ならではの付加価値でも貢献できたらいいなと思っています。」

-積極的に新商品開発に取り組まれていますが、どのような体制で進められていますか?

「新入社員でプロジェクトをつくっています。入社して何がしたいのか?を半年かけて考えてもらうんです。内装材もある営業の子が売りたいと言ってくれたことで動き出したんですよ。

商品企画の際、新入社員の彼らには常々伝えていることがあります。『我々がこれからすることはすべてが世界初だ』と。升業界でこんな挑戦的なことをしているメーカーは他にないですから。古い業界だけれどそれを逆手にチャレンジができる環境が彼らのやりがいになっているのかなと思います。」

カラー枡

目を引くカラー枡は主力商品に

-事業承継をされていますが、入社当初はどのような状況でしたか?

「結婚を機にコンピューター会社を退職して戻ってきたのですが、実は会社の売上が父親から聞いていた額の半分だった笑。これはまずい!と思って、必死に営業しました。当時はまだ祝い酒での用途がメインだったので、卸業者を飛び越えて直接蔵元へ枡を売り歩きました。

それを続けたところ売上が4割くらいあがって一安心していたのですが、5年ほど経てまた売上が下がってきました。時代が変わって祝い酒自体の需要が減少したのです。

このときに従来の業界の中だけで生きていたらだめだと痛感しました。商品開発を意識したのはその頃からですね。形を変えたり枡の使い方を変えたり徐々に商品群を増やしていきました。あの時の危機感が今に繋がっています。」

-今後はどのような挑戦をしていきたいです?

「枡には1300年もの歴史があると言われています。我々はその歴史のトップランナーなんだ、という想いで携わっています。枡を生み出し、伝え続けていった人々の熱意や努力を僕たちもまた次につなげていきたい。そのためには、枡がまた日常生活に存在する風景をつくっていきたい。『えっ、これ枡なの?かっこいいじゃん!』と言ってもらえるような、クールな提案をし続けたいですね。」

柔軟なものの見方、そして実行力。厳しい状況でも、そうした姿勢さえあれば道を切り拓くことができる。そう教えてもらったような気がします。これまで伝統的な利用法・やり方に知らず知らずのうちに縛られてきたであろう、森や木に関わるあらゆることにおいても、同じことが言えるのかもしれませんね。


有限会社大橋量器
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