【中・下流編】鉄道やトラックを使わずして、山から海まで木材をどう運んだ?

伐採編(https://moriwaku.jp/history/6036/
上流編(https://moriwaku.jp/history/6045/)に続き、木材がどのように木曽川を通り、海や貯木場まで運ばれていたのか見ていきましょう!

筏で川を旅する

木曽式伐木運材図会

※林野庁中部森林管理局所蔵

綱場(林野庁中部森林管理局所蔵)

綱場(林野庁中部森林管理局所蔵)

丸太や角材の状態で1本ずつ山から流されてきた木材は、木曽川の錦織綱場(にしごりつなば:現在の岐阜県八百津町)・飛騨川の下麻生綱場(しもあそうつなば:現在の岐阜県川辺町)で一旦溜められます。
※綱場とは、木材を堰き止めるためのダムのようなもの

 

地図河川地図

木曽式伐木運材図会

※林野庁中部森林管理局所蔵

少し脱線しますが、熟練してくると丸太や角材に乗って自由自在に操る玄人も現れたようです。まるでマーベル作品のスーパーヒーローさながら!

犬山城近くの木曽川の湊(林野庁中部森林管理局所蔵)

犬山城近くの木曽川の湊(林野庁中部森林管理局所蔵)

綱場で溜められた木材を筏として組み上げると、そこへ筏士(筏を操作する専業の人)が乗り込み川を下ります。小さな筏から始まり、川の流れが緩やかになる犬山(愛知県犬山市)や円成寺(現在の岐阜県笠松町)のあたりでは、もっと大きな筏に作り変えてさらに流下していきました。

木曽式伐木運材図会

※林野庁中部森林管理局所蔵

堀川を筏で運行(林野庁中部森林管理局所蔵)

堀川を筏で運行(林野庁中部森林管理局所蔵)

木曽川の河口近くまで来ると筏川(愛知県弥富市)に入り、一旦海に出たあと、堀川を遡上して白鳥貯木場(現在の名古屋市熱田区)へ向かいます。

木曽式伐木運材図会

※林野庁中部森林管理局所蔵

木曽式伐木運材図会

※林野庁中部森林管理局所蔵

このような河川を利用した木材輸送は、発電用ダムの建設や鉄道の発達などにより大正時代初期の頃に終わりを告げました。

現在では、鉄道やトラック、林業機械などを駆使することで比較的安全で速い木材流通網が構築されています。技術は進化していますが、それがもっとも優れているとも言えません。機械を動かすエネルギーに化石燃料を使うことで環境への負担は増えるばかり。

水・川の力を巧みに使いこなす先人の知恵がつまった歴史から学べることも多くありそうです。

※掲載している過去の写真や図会画像(林野庁中部森林管理局所蔵のもの)の二次利用は厳禁です


参考資料等)
・熱田白鳥の歴史館(http://www.rinya.maff.go.jp/chubu/nagoya/)各種展示