時間とともに味わいを育てる。木桶仕込みが美味しいのはなぜ?

醤油、味噌、酢、味醂、酒。
誰もが味わったことのある、和食の土台となる調味料の数々。さて、これらの共通点といえば、どれも発酵の力で造られる調味料であること。日本では、江戸時代までは木桶を用いて造られていました。

「“ました”……って、過去形?」

そう思った方もいらっしゃるのではないでしょうか?

実は、費用対効果が見合わないなどの理由から、桶仕込みの調味料は減少の一途をたどっています。現在はステンレス製タンクが主流となり、木桶職人も減少。大桶を製造する桶屋は、今では全国で1社のみとなってしまいました。そういえば以前、酒蔵を見学させていただいたことがありますが、仕込み桶はすべて金属製でした。もしかしたら木桶で仕込まれた調味料をまったく口にしたことがない人も、少なくないのかもしれません。

もちろん、木桶がすっかり使われなくなってしまったわけではありませんし、現役で木桶を使う蔵元はまだまだ全国に存在しています。ただ、新しい木桶の造り手が非常に少ない今、木桶文化はなくなるギリギリのタイミングにいるといえるでしょう。

しかしそんな中、木桶の魅力に惹かれ、桶仕込みを再開する蔵元が増え始めているそうです。立ち上がったのは、各地の若手醸造家たち。

木桶職人復活プロジェクト

醸造家たちが惹かれた、木桶の魅力とはどんなものでしょうか?

知らず知らずのうちに馴染みが薄くなってしまった木桶の魅力。それを広く発信しているウェブサイトがあります。それが、“木桶を伝えて増やすためのサイト「KIOKE」”(https://www.s-shoyu.com/kioke)です。

「KIOKE」では、木桶の特性を解説するだけでなく、香川県・小豆島で新桶づくりに携わる「木桶職人復活プロジェクト」や全国各地の木桶仕込みの蔵元の紹介、木桶仕込みの調味料を販売するサイト「職人醤油」の運営などを行っています。
※「木桶職人復活プロジェクト」の様子などはこちら↓
https://www.s-shoyu.com/kioke-project

※プロジェクトにも参画しているたまり醤油の蔵元「山川醸造」さんの記事はこちら↓
https://moriwaku.jp/history/5321/

どうして木桶仕込みはおいしいの?

ステンレスやプラスチックのタンクと木桶の一番の違いは、木桶そのものが、発酵の主役である微生物とともに「生き続けている」点です。

木桶の蔵

木材の表面には無数の小さな穴があり、さまざまな微生物の住処となっています。木桶の寿命は100〜150年といわれ、木桶と微生物はいわば人間の一生よりも長い時間を、ともに過ごしていくのです。

現在、現役の木桶は、明治や大正、昭和初期など戦前に造られたものがほとんどといわれていますから、市場にある木桶仕込みの調味料の中には100年以上の時間が積み重なってできた味わいのものも多いと思います。

木桶だけでなく、蔵も“味わい”を紡ぐ大切な要素

木桶だけでなく、木桶が保管される蔵全体も微生物の住処となりますから、蔵が置かれる地域の気候の特徴や日当たり、風通しなども微生物の生活に影響を与えます。さまざまな要素が絡みあって独自の生態系がつくられるため、同じ材料であっても蔵ごとに異なる個性が生まれます。この個性は「蔵ぐせ」とも呼ばれ、蔵を移築するとそれまで育ってきた個性に変化が見られるそうです。一見すればただの容れ物・建物である桶や蔵ですが、実際には蔵元ごとの味わいを造る上で非常に重要なことが、この言葉からも感じ取れます。

また桶仕込みの多くは春夏秋冬の温度変化に応じて発酵をする天然醸造のため、調味料が出来上がるまでに要する期間は年単位。決して短い時間ではありませんが、その時間もまた大事なポイントです。時間をかけて醸造することで、うま味成分であるグルタミン酸の量が多くなるという研究結果もあるそうです。

蔵元ごとの味わいを楽しんでみましょう!

木桶仕込みの調味料は、風土や蔵の環境の違い、蔵が紡いできた歴史そのものを味わうもの。そんな調味料を、実際に味わってみませんか?

職人醤油の商品

「職人醤油」では、異なる蔵元の醤油を楽しめるセットを販売。全国各地の醤油がセットになっているので、自分のお気に入りを見つけるのにもうってつけです。また、醤油ごとにおすすめの料理も紹介しています。「この料理にはこれ!」といったような、楽しみを見つけるのもいいのではないでしょうか。

※職人醤油のサイトはこちら↓
https://www.s-shoyu.com/