大人のクラブ活動「里山SUNDAYS」に参加。 伊吹山麓に残る「採薬の村」とは?

田舎暮らしを学びたい。そんな方にピッタリなのが「里山SUNDAYS

田舎暮らしには興味あるけど、なんにも知識がないし・・・。どこか勉強できるところがないかな?なんて思っている人、実は結構多いのではないでしょうか? 何を隠そう、僕もそんなことを思っている一人だったりするんですが、そんな方にピッタリの講座が、自然豊かな岐阜県揖斐川町で定期的に開催されています!

その名も「里山SUNDAYS」。以前、この森ワクサイトでも紹介した「一般社団法人ヤマノカゼ舎」が主催するもので、揖斐川町の築110年の古民家を拠点に、里山の整備や古民家の改修、食文化の3つを柱に、田舎暮らしの技や作法を学ぶクラブ活動を行っています。
※「一般社団法人ヤマノカゼ舎」についての記事はこちら↓
https://moriwaku.jp/activity/5426/

「平井さん、こんな講座があるんですけど、取材がてら参加してみませんか?」。森ワク編集部の方からそんなお話をいただいた僕は、一瞬の迷いもなく「行きたい!!」と即答。現在、愛知県一宮市という「トカイナカ(田舎すぎない田舎のこと)」に住んでいますが、将来、さらなる田舎との二拠点生活も視野に入れているだけに、早速、編集部の方に参加申込みをしてもらい、大学時代から約20年ぶりとなるクラブ活動に参加してきました!

当日はあいにくの雨模様。憂鬱な気分も、説明を聞いているうちに徐々に引き込まれ・・・

里山SUNDAYSは原則、毎月第2日曜の午前10時から午後3時ごろまで。年10回程度、おおむね月イチペースで活動を行っています。2019年度のスケジュールもすでに決まっていて、僕は6月16日(日)に行われた「山の保存食を調べる(1) 伊吹山の薬草栽培地を訪ねて」に参加させていただきました。

ただ、当日はあいにくの空模様(苦笑)。朝9時半、集合場所の「春日モリモリ村」駐車場に到着した頃はパラパラ程度だった雨も、10時頃にはかなりのドシャ降りに。「おいおい大丈夫かよ・・・」と内心思いながらのスタートでしたが、講師を務める嵯峨創平さんから伊吹山の薬草文化のお話をお聞きするうちに、そんな不安も吹き飛び、日常生活ですっかり錆び付いていた好奇心が刺激されていきます。いや~、大人のクラブ活動って楽しいですねぇ。

伊吹山

滋賀県側から見た伊吹山

嵯峨さんのお話によると、伊吹山周辺は古くから「薬草の宝庫」として有名で、あの織田信長がポルトガル人宣教師に命じて薬草園を作らせたという伝承もあるんだとか。伊吹山の山頂に足を運んで、「キレイだな~」なんて景色に見入ったことはありますが、そこまで薬草が有名だったなんて、不勉強でまったく知りませんでした・・・。

春日モリモリ村の休憩場所で、嵯峨さんから解説を受けた後は、お話にも登場した「古屋集落」へと移動。春日地区のなかでもさらに山深いエリアにある古屋集落には、明治から大正にかけて活躍した「採薬師」、小寺甚五郎さんの子孫の方が暮らしていると聞き、期待に胸を膨らませながら現地へと向かいました。

現役の採薬師さんが自宅でお出迎え。自宅の周りには、いたるところに薬草が!

車で走ること30分、春日モリモリ村周辺もかなりの山間地でしたが、さらに濃い緑に囲まれた「古屋集落」は、「秘境」と呼んでも過言ではないほどの佇まい。そんな集落の一軒、風情たっぷりの古民家を訪ねると、小寺甚五郎氏のひ孫にあたり、定年退職後、伝統の採薬師を継承して薬草栽培を続ける小寺明さんが笑顔で出迎えてくれました。

採薬の村

まるで「現代に舞い降りた仙人」といった雰囲気漂う小寺さんは、僕たち参加者に伊吹山麓で採れる薬草について丁寧に解説してくれました。「これがトウキだね」と話す小寺さんの視線の先には、小さな白い花を咲かせたかわいらしい植物が。

イブキトウキ

イブキトウキ

ミヤマトウキ、イブキトウキとも呼ばれ、「当帰」という名前で漢方薬としても用いられるものです。そんな薬草が、ご自宅の軒先にたくさん生えているのを見てびっくり!

トウキ以外にも、漢方薬の原料に使われる野草がいたるところで栽培されていて、薬草とともに生きてきた採薬師の暮らしぶりが垣間見られる一コマでした。

乾燥させている薬草

そのほかにも、実際に採取して天日干しを行っている薬草なども見学。梅雨時期ということもあり、小寺さんの口からは「6月は大変。夕立にあたるといけないのですぐに取り込むんです。一度雨に当たったら薬効成分が流れ出してしまいますから」といった苦労話も。その後、小寺さんのご自宅をお借りして昼食を取った後は、お隣の集落「笹又耕地」へと向かいました。

伊吹山の麓に広がる栽培地、笹又耕地へ。貴重な体験の連続で大満足の1日に!

笹又

笹又地区

古屋地区よりもさらに標高が高い場所にある「笹又耕地」は、現在住んでいる人がいない地域。かつては集落があったそうですが、かつての住民は徐々に隣の古屋などに移住していったとのこと。ただ、伊吹山まで続く高低差のある地形は、野草を育てるのに最適で、今でも50名ほどが名を連ねる笹又協議会が中心となり、約3kmの獣害防護柵で耕地を囲うなど、薬草の栽培地として大切に守られているそうです。

山肌に点々と設けられた畑のひとつを案内してくれた小寺さん。かなり勾配がきつい畑には、小寺さんの自宅周辺でも見られたトウキがたくさん栽培されています。伊吹山麓の清々しい空気に癒やされながら畑周辺の景色を見ていると、雄大な自然に圧倒されるのと同時に、大切に受け継がれてきた薬草文化を守ることの大切さ、その難しさを改めて感じました。

・・・というわけで、途中、「どんだけ雨男なんだよ!」と辟易するほどの悪天候に見舞われたものの、楽しく貴重な経験が盛りだくさんで、大満足で終了時間を迎えた「里山SUNDAYS」。参加はいつからでも、単発でも、毎回でも、自分のペースに合わせて選択できるとのことで、田舎暮らしに興味のある人、日々の生活を見つめ直してみたい人が、楽しみながら学べる絶好のチャンス! 僕も機会があれば、ぜひまた参加しようと思います!
※今後の開催日程についてはこちらをチェック!↓
https://moriwaku.jp/event/5637/