【前編】木製ホールドが切り拓く、クライミングの新世界

クライミングやボルダリング、皆さんはやったことがありますか?

岩や壁を登る“あれ”です。

クライミング

2020年の東京オリンピックで公式種目に「スポーツクライミング」が追加されるなど、ますます注目度が高まっています。

クライミングには、スポーツクライミングやフリークライミングなどジャンルごとに呼び名もありますが、この記事では包括的な意味で“クライミング”を使うことにします。

ちなみにボルダリングはクライミングの一種で、約5m以下の壁を必要最低限の道具(チョークやシューズ)だけで登るもの。

ボルダリングを経験したことがある方なら、カラフルな樹脂製のホールド(手や足を引っ掛ける突起状のもの)が壁に散りばめられている光景を見たことがあるでしょう。

ボルダリングのホールド

こうしたクライミングで使われるホールドは樹脂製が一般的です。

そんな中、このホールドに木を取り入れた、新たな楽しみ方が提案され始めていることはご存知でしょうか?

この動きを少しずつ加速させているのが、岐阜県大垣市にあるオリジナルクライミングブランド「MONKEY-HOLD」を運営する「株式会社Leawood」です。競技用から初心者向けまで幅広い木製ホールドの製造・販売を行っています。

これからますます熱くなるであろうクライミングの分野で、木製ホールドはどのような存在なのか、どんなふうに製造されているのか、木に吸い寄せられた森ワク編集部が突撃取材してきました!

本物の岩を登るように
探る面白さが木にはある!

ボルダリング中の渡邊一也さん

もともとは趣味としてクライミングジムに通い始めたという、同社のオーナー兼デザイナーを務める渡邊一也さん。本物の岩を登り始める(いわゆるロッククライミング)ようになると、岩の凹凸や割れ目など、どこにどのように手をかけて登るかという面白さに目覚めます。

ロッククライミング

木工家でもある渡邊さんは、木を使うことで岩と同じような感覚を味わえるホールドをつくることができるのでは?と、ふと着想を得ました。

その後、仕事で忙しい日々が続き、手軽にクライミングがしたい、という衝動が木製ホールドづくりへと踏み出す引き金となっていきます。

そして約4年前、クライミング仲間とともにオリジナルクライミングブランド「MONKEY-HOLD」を立ち上げました。

2018年からは株式会社Leawoodに業務委託し、初期メンバーの一人である吉田翔太さんが運営責任者となり、ホールドづくりも担っています。

これがホールドづくりだ!

木製ホールド製作

ホールドの製作を担う吉田翔太さん

製造現場である本社の工房にお邪魔しました。

製造も担っている吉田さん、なんと、もともとはギターなどを製造する楽器製作者でした。家具製作の経験もあり、ずっと木に触れてきたそうです。そのときの経験を活かしながら、でも、全然つくり方の異なるホールドを製作している現在。「まさかこれが仕事になるとは思っていませんでした(笑)」とこれまでの経緯を率直に話してくれました。

材料は材木屋さんから調達。国産のケヤキや外国産のマホガニー・パープルハートなど、多彩な樹種を取り扱っています。スポーツとして使い込むため、ある程度硬くて強度に耐えられる材が向いているそう。材木屋さんも協力的で、作りたい商品に合わせた材料をストックしてくれています。ホールドづくりには材木屋さんの存在も必要不可欠なのです。

どかっと仕入れた材料は、工房内にある機械で最適な大きさにサイジングしていきます。それをさらに削り出し、固定用の穴をあけ、表面を塗装し、焼印を入れるという工程を経て商品へと形を変えていきます。

COBU-HOLD

塗装前の「COBU-HOLD」

同社の代表的なホールドである「COBU-HOLD」は加工もひと苦労。というのも、このホールドで象徴的に使っている“木のコブ“がめちゃくちゃ硬い!!!

樹木にできた傷を修復しようとしたときなどに、特殊な細胞組織が形成され、それがコブとなって表れます。非常に強固な組織となるため、通常の木材加工では嫌われがちなコブ。それを大胆にもフル活用しているのが「COBU-HOLD」なんです。

「加工は大変ですけど、そのコブと向き合いながら削るのが醍醐味なんですよ」と嬉しそうに話してくれた吉田さん。なるほど、つくっている本人が何よりも楽しんでやっているのだなと実感した次第です。

間近でコブを見てみると、木の生きた証とでも言うのでしょうか、生命のうごめきのようなものを感じます。一つとして同じ模様がないところも心をくすぐられますよね。

工房内に並ぶホールドを見ると、どれも形はバラバラ。ホールドのデザインは感覚的につくる部分が大きく、一つひとつ“曲線美”を探りながら削り出していきます。

「傾斜が1度変わるだけでホールドの表情が変わります。壁に取り付けると置物のような状態になるので、一方は高くもう片方は低くみたいな、見る角度によって表情が違うように意識して削っています。どこから見ても一緒のものは面白くないですからね」

後編記事(https://moriwaku.jp/activity/6454/)では、活用例や使用者の声を紹介していきます。


株式会社Leawood
岐阜県大垣市築捨町5丁目128番地1
★木製ホールドの購入は以下から↓
https://monkey-hold.com/