お酒の歴史上はじめての「木のお酒」、ついに誕生?!

日本酒や焼酎に加えて、ウイスキーも日本産の人気が高まっていますが、実はいま日本で木のお酒の開発が進んでいて、安全性が確認されれば世界初の「木のお酒」が誕生するかもしれません。

試験製造されたものの中には長期間樽熟成したような芳醇な香りや桜餅のような香りのものもあるそうで…気になります。木のお酒とはどんなものなのか?ご紹介します!
※トップ画はイメージ写真です

食べられない木が、お酒に?!

ワイン醸造所

木の香りのお酒なら知ってるという方もいるかもしれません。杉樽仕込みの日本酒やオーク樽で熟成されたウイスキーなど木の香りがするお酒はありますが、それらは木の香りなどの成分をお酒に溶けこませたもの。

茨城県つくば市にある森林総合研究所が開発に取り組んでいるのは、木材そのものをアルコール発酵させてつくるお酒なのです。

少なくとも紀元前のメソポタミア文明の頃には製造されていたというお酒。そこから現在に至る長いお酒の歴史上さまざまなお酒が生まれましたが、その原料は果実や穀物などそのままで食べられるものでした。

木をお酒にする。

幾千年もの間、不可能とされてきたことを実現する技術とアイデアには驚きしかありません!

もともとは、木材からエネルギーを得るための技術

飲用としての木のお酒はこれまで存在しませんが、近年になり脱化石資源、グリーンエネルギーという観点から木材を原料に燃料用アルコールを製造するさまざまな技術が開発されるようになります。

木のお酒の開発に挑む森林総合研究所でも木材の新しい前処理方法として、「湿式ミリング処理」という技術を開発しています。「湿式ミリング処理」は、水中で木材を微粉砕することで、熱処理や化学的な薬剤処理を行うことなく木材の糖化と発酵を可能にする技術。

木のお酒研究内容

※森林総合研究所提供

この技術を用いて木材をメタン発酵したりアルコール発酵したりして、木材からメタンガス燃料やバイオエタノールを製造する試みがされていたそうです。

燃料用から、お酒へ。華麗な転身?!

森林総合研究所が開発した「湿式ミリング処理」は装置が食品加工に利用されているだけでなく、加える材料も全て食品用の添加物でした。

そこで考えられたのが、木材を発酵しエネルギーを製造するのではなく、これまでにない利用分野の開拓でした。香りを飛ばしてしまう熱処理も、飲用に不安のある化学的な薬剤処理も必要ない「湿式ミリング処理」だからこそ、燃料用からお酒へ、という大胆な転換が可能になったのですね。

サクラの木のお酒からは、桜餅の香り

木のお酒の研究内容

※森林総合研究所提供

試験製造に用いられたのは、スギ材、シラカンバ材、サクラ材。それぞれの材を湿式ミリング処理し、発酵と蒸留を経て得られた蒸留物からは原料の木材特有の香りが感じられるそう。

スギのアルコール発酵液の蒸留物はスギ特有の香り成分であるテルペン類が多く含まれ、スギ材特有の香り。シラカンバのアルコール発酵液の蒸留物には、ウイスキーやブランデーを長期間樽熟成したときに生成する熟成香の成分。サクラのアルコール発酵液の蒸留物は、桜餅を連想させる独特の香りが感じられるそうです。

あなたは、どの木のお酒が飲んでみたい?

日本酒イメージ

また木の種類によって含まれる香りの成分が異なることから、1200種類といわれる日本の木それぞれの香りを持つアルコールができると考えられているそう。スギやシイ、カシ、ブナなど何種類もの木のお酒を集めて、豊かな日本の森に酔いしれる…なんてこともできるようになるかもしれません。その際は飲み過ぎにはご注意くださいね。

私たちが木のお酒を楽しむことができるのはまだ先になりそうですが、実現すれば日本各地の特徴ある樹木がお酒になり、新たな産業として林業振興につながる可能性も。こちらも楽しみです。

森林総合研究所では、ともに開発できるパートナーを募集中。
我こそは!という方はぜひ以下へお問い合わせしてみてください!

※森林総合研究所のHPはこちら↓
https://www.ffpri.affrc.go.jp/ffpri.html