木工のプロだからできること、時代に求められていることがある【オークヴィレッジ株式会社】(後編)

一本の木が生き物として生きている状態から、伐採・加工され材料となり、モノとして私たちのもとに届くまで、長い距離と時間がかかっています。

その過程では、仕事という形であらゆる人の手を通って来てもいます。しかし、その事実は世間に全然伝わっていません。あんなに巨大な生物資源をみんなで苦労して消費者のもとへ届けているというのに、知られていないのは悲しい…!

ということで、森に直接的・間接的につながっている色々な仕事をシリーズ記事として紹介していきたいと思います。

※森ではたらきたい!という方は、合わせてWEBサイト「森、しごと、探す。」をチェック!↓
https://job.moriwaku.jp/

オークヴィレッジの佐々木さん

オークヴィレッジ株式会社取締役の佐々木一弘さん

今回は、森ではたらくシリーズ第一弾として、小物や家具、木造建築など環境共生型の木のモノづくりに取り組む「オークヴィレッジ株式会社」の取締役・佐々木一弘さんに話を伺いました。

建築を学んでいた大学時代

東京の大学で建築を学んでいた佐々木さん。木工職人を目指すようになったのは大学生の頃。その頃ちょうど、環境意識が高まった年代であり、バブル経済の終盤でもありました。

「当時はどんどん東京都内におかしな建物が建って、すぐ壊されて、また建ってっていう恐ろしいサイクルで世の中が回っていてね、これから長く生きていく上で環境のことを真剣に考えていかなきゃいけない世代なんじゃないかと思ったりして」

こうした時代背景に加えて、佐々木さん自身の生い立ちや興味関心も少なからず影響しています。

「当時アメリカに憧れて、短い留学をしたことなんかもあったんですけど、アメリカの自然と共生していく考え方にすごい惹かれていて、そんなことを考えながらアメリカをぶらぶらしてました。そこでね、手に職を持ってる人というか、何か特技を持ってる人ってね、結構楽しそうに生きてたんですよ皆さん。『そういう生き方ってかっこいいな』と思って。僕も将来的にはアメリカで暮らそうと当時は思ったりしてて、そうすると何かね、手を使ってモノをつくるのがいいかなと思って。もともとそういうのが好きだったのもあるんですよね。父親が工務店をやっていたので、周りに木はあったし、木でモノをつくるのは割と自然なことでした」

学生時代のゼネコンでのアルバイトは「ビルの設計ばかりでつまんない」という思いと同時に、木造建築や家具製造への興味がおぼろげに湧いてきました。このときタイミング良く、デンマークの家具ブームが到来。東京の展示会などに足を運ぶ中で、

「家具は建築物の付属くらいにしか思ってなかったけど、『これほど豊かな世界を木でつくれるのか!』と思いました。建築は自分でできることなんて限られてるけど、家具だったら全部自分でできる、スミからスミまで自分の思ったようにできるかなって」

こうした幾重ものきっかけが積み重なって、「木工をやろう!」と卒業と同時に飛騨高山へ趣き、木工技術を学ぶ『森林たくみ塾』へ入りました。

オークヴィレッジ入社~現在

オークヴィレッジのショールーム外観

佐々木さんも工事を手伝ったというショールーム

2年間の修行を経て、卒業間近という頃。就職のあてが特になく、引っ越しをするお金もない状況だったという佐々木さん。ちょうどそのとき、オークヴィレッジ株式会社の20周年記念事業として、ショールームを新しく建てる工事の真っ最中でした。実は、森林たくみ塾は同社のグループ傘下。そうしたつながりもあって、工事の人手が足りないから手伝ってくれないかと声を掛けられ、手伝うことに。「で、そのまま居着いちゃって。高い志も特になかったし(笑)」。まさかの流れでした。

オークヴィレッジの工房

創業時から使い込まれてきた工房

「入社して最初は、『いいモノをつくりたい』、もちろん今でもずっと思ってるけど、『かっこいい椅子をつくりたい』みたいな、そっちの方に関心がありました。そんなことでずっとモノづくりをしてきたんだけど、モノをつくる行為、線を書くとか、木を削るとかの直接的なことだけじゃなくて、そこへ行くまでのプロセスとか意義とか、そっちの方に重要性があるんじゃないかとここ何年かで思うようになりましたね。次第に自分を取り巻く社会環境の変化、自分自身の関心の変化、色んなことが化学変化を起こしたのかなと思います。

そんなときにNeo Woodsを始めてみたら、反応が結構あった。色んな人たちが声を掛けてくれるようになって、じゃあ一緒に考えてみましょうかということで、色んな地域で4~5年活動して今に至るという感じです。職業が何かって言われると自分でも分からなくなりますね(笑)ここまできて思うのは、何がしたいかってことも大事なんだけど、世の中からニーズがあって声を掛けてもらえるってことは、一応世の中から必要とされてるってことなんだよね。そういうことをね、一生懸命やってったら、それはそれでいいのかなって最近はちょっと思ってるところもあるんですけど…。何かしたいことがあるとすれば、やっぱりもっと日本の木を使って森を健全にしたいですよ!」

と、最後はとってもシンプルな思い!

「今は結局、パルプやバイオマスの材料として木が粉々になるでしょ?実際に造林の現場なんか行くとね、僕らから見るとヨダレが出るくらい良い材料が粉々にされちゃうんですよね。あそこまで育つのに100年くらいかかってるわけですから、一瞬で粉々にしたら良くないですよね」

こうした思いが今の佐々木さん、ひいては、会社全体の考えにもつながっているんですね。

技術にこだわりを持つ真面目な人間が多いですよ

オークヴィレッジの職人さん

リアルな森の中に本社を構えるオークヴィレッジ株式会社。高山の本社には50名ほどのスタッフが在籍しています。どんな方たちがはたらいているのでしょうか?

「当社はつくることが好きな人、開発を追求するような人が多いんじゃないですかね。社員を一言でいうならば、正直で真面目な人間が多いですよ」

本社のスタッフはパートさんを除くと、ほとんどが地元以外から来ているIターン者ばかり。オークヴィレッジの理念や活動に共感して来ている方が多く、自ずと木や自然が好きな人が集まってきています。

これから森で、面白くはたらくには

木工という立場でずっと森と関わってきた佐々木さんに、これから森ではたらくことを志す人たちへのアドバイスを聞いてみました。

「時代ってやはり変わっていきます。今まであった職種に就職しようと考えるよりも、今の時代にあった、例えば森とマーケットのつなぎ方などを考える。森側の人が木でモノをつくりたいと思っても、どうつくっていいのか分からないだとか、そういう人って結構いるわけです。イノベーションを興すつもりで入って来られると良いんじゃないかなと」

「業界のことを勉強してね、色んなことを知ればどこが足りないか分かるから、その足りない部分を補うように何かができれば、そして、そういう人たちが増えれば、業界の構造が変わってくるんじゃないかなと思うんですよね」

「森と携わって仕事がしたい、だから林業とかね、木と携わって仕事がしたい、だから木工するとかね、そういう短絡的な考え方じゃなくって、その人が持ってる得意な部分を発揮するために、今の社会構造の中で自分が活躍できる場所がないかとか、そういう目線が持てるようになれば、そう簡単なことじゃないとは思うんですけど、面白いんじゃないかと思います。結果的に僕みたいな職種に行き着くかもしれませんし(笑)」

「とにかく、よく勉強することですよね。僕自身もずーっとそう。知らないことだらけだから。二十数年この業界にいても、ルーティンからちょっと出ると、知らないことだらけですよ」


オークヴィレッジ株式会社
(高山本社・工房)
岐阜県高山市清見町牧ケ洞846
0577-68-2244
https://www.oakv.co.jp/

★森ではたらきたい!という方は、WEBサイト「森、しごと、探す。」をチェック!↓
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