「森の人」を通して見つめる、森林そして社会の現状

突然ですが、クイズです。
地球上に現存する熱帯雨林の約1割を有する国とは、どこでしょうか?

正解は、インドネシア。皆さんご存知でしたか?
雄大な熱帯雨林には多種多様な生き物が生息しているため「もっとも生物多様性の豊かな国」ともいわれています。
そんな環境で生息しているのが、オランウータンです。

オランウータンの森再生プロジェクト

インドネシア語で「森の人」を意味し、インドネシアの一部の島でのみ生息する、アジア最大の類人猿・オランウータン。果物食を中心とした雑食で、日常的に糞として果実の種を森に散布しているため、オランウータンが生きていることで、自然と森が育まれるサイクルを作り出しているのです。
オランウータンが健やかに生きられる森は、つまりは多様な生き物を包み込む豊かな環境だといえるでしょう。

森の生き物が直面する現実と、日本との関係

オランウータンの森の再生プロジェクト

しかし今、そんな森が急激に荒廃・減少しています。
主な原因は計画性のない森林伐採や違法での野焼きとその延焼火災によるものです。2015年にインドネシア各地で発生した森林火災は、数ヶ月にわたって延焼し続け、最終的には東京都12個分にも及ぶ熱帯雨林が消失したといわれています。

「SAVE THE ORANGUTAN FOREST」ホームページより

火災による大気汚染「煙害(ヘイズ)」が深刻化し、都市部で生活する人間の生活に影響を及ぼしました。

森が失われ、生き物の命が失われ、人々の健康が失われていく。
これは、決して「遠い国の出来事」として片付けて良い問題ではありません。むしろ今の日本の生活とインドネシアの現状は、深く関係しているといえます。例えば、野焼きが行われる背景には、スナック菓子などの揚げ油、洗剤などの原料に使われるパームオイルや、紙の材料となるパルプ生産のための開墾が目的の一つとして指摘されています。

オランウータンの森再生プロジェクト

オランウータンの森再生プロジェクト

パームガーデン

森を切り拓いて作られたパームオイルやパルプから作られた紙を、日本は数多く輸入しているのです。何気なく日常で使うものが作られる背景に、実は大きな社会問題があるなんて、知る機会はそう多くはありませんよね。

森と生きるために、私たちに何ができるのか

オランウータンの森再生プロジェクト

この現状を受け、立ち上がったのが一般社団法人more treesです。同団体は「オランウータンの森 再生プロジェクト」を発足し、現地パートナー「BOS財団」と連携して、森をよみがえらせるべく活動をスタートしました。
プロジェクトでは「BOS財団」が運営するオランウータンのリハビリ用地のうち、2015年の森林火災で焼失した266ヘクタールの森の回復をめざします。
また、森を回復させる上でかなめとなる、3つのゴールが設定されています。

1:火災跡地への植林
2:火災発生に備えるインフラの整備
3:現地ツアーの実施

フタバガキ科を中心とした在来種と、オランウータンのエサとなるドリアンやランブータンなどの果樹を植樹し、保護したオランウータンが自然に還るためのリハビリにも適した環境を整備。森林火災に備えて貯水池や防火帯といったインフラ整備を行って、たとえ火災が起きても最小限の被害にとどめられる、持続可能な森林管理の実現をめざしていきます。
そして、オランウータンが生きる森の「今」を知るためのエコツーリズムの実践を通して、森を維持する重要性を発信していきます。

めざすゴールは決して小さくありませんが、個人でも1口1,000円から支援が可能です。1口1,000円で苗木を1本植えられますし、30,000円の支援で貯水池が作れるそうです。

「SAVE THE ORANGUTAN FOREST」ホームページより

ただ、このプロジェクトは単に、オランウータンが生きる森を守るため“だけ”のものではありません。
「森の人」であるオランウータンの生きる森を守る。それは巡り巡って私たち人間そのものを守ることにつながる。そんな思いが、このプロジェクトには込められています。
土がコンクリートに変わり、木がビルに変わってしまった都市の中で、森と人の関係性は想像しづらいものかもしれません。
しかし生きる場所にかかわらず、私たちの生活は確かに森によって守られ、支えられています。
だって考えてみてください。きれいな空気も、植物を育む土や水、川も、川がやがてたどり着く豊かな海も、森がなくなればすべて失われてしまいます。
そんな何もかもが失われた世界では、人間は生きていけません。

「オランウータンの森 再生プロジェクト」のスローガンは「BE FOREST PEOPLE.」。一人ひとりが「森の人」として、森とともに生きるためにできることを見つめるプロジェクトと言えるのではないでしょうか。

 

※「オランウータンの森 再生プロジェクト」のHPはこちらhttp://orangutans.more-trees.org/