ブナ林ってどんな森?

森林について学んでいると度々“ブナ林”という言葉を耳にします。ブナがいっぱい生えている森なのだろうか?そのくらいの認識しかありませんでした。そこで、今回はブナってなんだろうというところから、ブナやブナ林について調べてみました!

「ブナ」はブナ科ブナ属の落葉広葉樹です。北海道南西部、東北地方では平地から山地にかけて分布しています。それより南の本州、四国、九州では標高700メートル以上の山に分布。ブナは少し山にわけいったところに生息しているようです。秋には落葉し、どんぐりをつけます。このどんぐりはツキノワグマの大好物で重要な栄養源です。

ブナ林とは?

ブナ林を簡単に言ってしまうと、ブナを中心に様々な落葉樹が生育している天然林のことを指します。日本は昔からこのブナ林が各地に広がっていました。そのため、日本の自然がつくった昔ながらの姿を残した天然林と言えます。ブナ林では、少し変わった現象を見ることができるんです。まずは、こちらのブナ林の植生を見てください!

林野庁 東北管理局ホームページより引用 (http://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/syo/huzisato/buna_gaido.html アクセス2018/06/11)

多雪の日本海側と少雪の太平洋側で生育している植物が大きく異なっていることが分かります。このことを森林植生の“背腹性(はいふくせい)”といいます。地面近くに生育している植物も異なっているので太平洋側と日本海側での森の様子は随分違って見えることでしょう。
また、雪の多く降る日本海側では、“根曲がり”という現象をみることができます。木の根元が曲がっている樹木のことをそのように呼びますが、これは雪と樹木が戦った証です。雪の重圧に負けないように樹木たちも必死に体を支え、厳しい冬を頑張って乗り越えています。

根曲がりするブナ

ブナ林の大部分は落葉樹で構成されています。林内では、落葉樹たちが秋に大量の葉っぱを落とします。地面には落ち葉によって厚く敷き詰められた葉っぱでいっぱいです。その様子はまるで自然でできた絨毯の様。落ち葉の層は土壌動物や微生物たちの住処にもなっています。この落葉が堆積すると微生物が働き、養分たっぷりの土壌へ変化。そしてこの土壌や微生物が川下へ流れることで田畑や海を豊かにするそうです。このようにブナ林は生物多様性や土壌の発達を支える重要な役割をしています。

秋のブナ林

貴重な日本の原生林

そんなブナ林ですが、原生林(人の手が入っていない森)はとても少なくなってしまいました。世界的にも大規模で残っているものはそう多くありません。
そんな中、日本の白神山地は、原生的なブナ天然林が大規模で残っているということで有名です。林野庁のホームページによると白神山地森林生態系保護地域の区域は、約17,000ha(170 km2)の面積にも及びます。ご存知の通り、世界遺産にも選ばれており、その希少性は世界からも評価されています。

白神山地の風景

ブナ林が減少してしまった要因の一つに、スギやヒノキの植林に置き換わっていったことがあります。というのも、ブナは伐採して短期間で変色する、水を吸収すると腐りやすい、などの性質があります。そのためブナを材としては使いにくく、その代りに建築用材として使いやすいスギやヒノキが多く植えられるようになっていきました。現在では、木材乾燥技術の進歩により、ブナを家具や合板、床材など様々な用途に用いています。私もブナのスプーンを愛用しています。小さな斑点が特徴の木目は可愛らしい印象でとても気に入っています。

今回は、ブナとブナ林をご紹介してきました。ブナ林は、大面積では白神山地でしかみられなくなりましたが、各地に点在しています。新緑のブナ林や秋の紅葉したブナ林など、季節によって変わった姿を楽しめるのもブナ林の魅力です。ブナ林の魅力を確かめに日本の天然林へ足を運んでみてください!

参考文献)
平野伸明 文;野沢耕治 写真(2006)『ブナの森は宝の山』福音館書店
梅原猛、市川健夫、四手井網英ら(1985)『ブナ帯文化』思索社
寺澤和彦、小山浩正(2008)『ブナ林再生の応用生態学』文一総合出版
太田威(1988)『ブナの森は緑のダム』あかね書房
太田威(1992)『自然からのおくりもの 出羽のブナの森』日本書籍
根深誠(1987)『ブナ原生林 白神山地をゆく』立風書房