飛騨の木を贈り物に「ひだ木(ギ)フト」(前編)

日本では緯度の高い地域に多く生育している広葉樹。そのため、北海道や東北が主な木材産地となっています。そんな中、中部地方にも広葉樹が豊富にある地域が存在しています。それは岐阜県飛騨市。飛騨の木と言えば、針葉樹よりも広葉樹なのです。

飛騨市では特異的であるこの資源を有効活用しようと、“広葉樹のまちづくり”を掲げ、ある取り組みを進めています。

と、その前に。
森ワク的に重要ポイントである、日本における広葉樹材の現在をまずは振り返ってみましょう!

木材としての広葉樹

ケヤキの落ち葉

ケヤキの落ち葉

広葉樹は幅のある平ぺったい葉を持った木のこと。秋の景色を彩る紅葉となり、ケヤキやカエデ(モミジ)などの落葉する種類が多くあります。ちなみにスギやマツを代表とする針葉樹の葉は針のように細かったり、よーくみるとウロコ状の細かい葉を持った木のことで、常緑樹が多いです。

日本の森林面積に占める種類別面積の割合

※林野庁「森林・林業統計要覧2018」から作成

日本の山に生えている木の中で、広葉樹と針葉樹の割合はだいたい半々。

日本の樹種別素材生産量の割合

※林野庁「森林・林業統計要覧2018」から作成

一方、流通している国産木材のほとんどは、針葉樹人工林で育てられたスギやヒノキです。育てやすさ、加工のしやすさなどから、木材の中ではもっとも有用性・汎用性が高いとされているため、流通量が多いんですね。

では、広葉樹はどうでしょうか?
上のグラフを見ると全体の約1割しかありません。しかもこのうち、9割以上が製紙や燃料用などのチップとして使われています。

※林野庁「平成26年度森林・林業白書」より

このチップ、材としてはかなり低い単価の商品なんです。山にある広葉樹の量は多いものの、材木として使われる量が少ないこと、また低価値な材料であるというのが現状です。

広葉樹活用の先に見えるもの

飛騨市は森林率93.4%(この数字もなかなか驚異的!)のうち、約7割が広葉樹です。先ほどのデータから見ても、樹種構成が特殊な地域であることが分かります。

※飛騨市「飛騨市が描く広葉樹のまちづくり」より

広葉樹林のうち木材として利用されている量はごくわずかで、そのほとんどがチップ用材として安価で売られています。比較的直径の細い木が多く、たとえ家具用材などとして十分な直径でも仕分けに手間がかかるなどの理由で、結局は単価の低いチップ用の木材として出ていきます。言ってしまえば、お金になる木が少ないということです。

山間部においてはありふれた存在となってしまうほど豊富にある森林資源。化石資源とはちがって、人が手入れをすることで循環させることができる貴重な資源でもあります。

広葉樹をはじめとしたサステイナブルな資源を、より価値のあるものに昇華させ、活用することができれば、地域の中を回るお金も増えてくるはずです。自律的な地域を生み出すための鍵を握っていると言えるかもしれません。

飛騨市でも、小径木広葉樹の新しい価値を創造していこうと平成27年から新たな取り組みを始めました。一つは東京の民間企業との第三セクター「㈱飛騨の森でクマは踊る」の設立。民間企業の多様なネットワークとクリエイティビティを取り込むことで、飛騨市産の小径木広葉樹を使って、都市部オフィスのリノベーションなどを手がけています。

そしてもう一つが、地域全体を巻き込んだプロジェクト「ひだ木(ギ)フト」です。

おっと、気付けば前置きがかなり長くなってしまいましたね…。(すみません)
詳細は次回に持ち越します!後編記事をお楽しみに!