千年先の未来にも美しい里山を残したい。 Part 3

岐阜県美濃加茂市・アベマキ学校机プロジェクト
卒業記念品贈呈式編

岐阜県美濃加茂市のアベマキ学校机プロジェクトの第三弾!今回は、学校机プロジェクトがみんなを惹きつける理由をプロジェクト発案者である和田さんに伺うとともに、卒業記念品贈呈式の様子をお伝えします。

アベマキのように強く、太く

アベマキ学校机プロジェクト

この日は卒業式。式典後の教室で記念品贈呈式が行われました。ひとりひとりに手渡されたのはアベマキのシャープペンシル。これから一歩ずつ大人に近づいていく彼らの毎日に寄り添い、支えになってくれそうです。

記念品とともに贈られた「アベマキのように強く、太く生きてください。」という言葉を胸にがんばってほしいと思いました。

ゆくゆくは、6年間使った机を卒業証書に。

「卒業証書をつくることは決まっています。」と教えてくれたのは、市役所農林課の山田さん。アベマキ机を使う子が卒業する時には、その机を使って卒業記念品をつくる予定なのだそう。

ひとつの役目を終えても木材は形を変えて活かせること、木材資源を無駄にせず使う大切さなど、6年間寄り添ったアベマキ机はその姿を変えて、子どもたちにかけがえのないことを教えてくれそうです。

地元の人が地元の資源の恩恵を受けられるしくみづくり

アベマキ学校机プロジェクト

和田賢二さん

贈呈式後、お話しを伺いました。

里山再生のために美濃加茂市内にたくさんあるアベマキを活用して製品化して売り出したいと相談されたのが、岐阜県森林文化アカデミーで先生をされていた和田さんでした。
※和田さんが現在運営しているシェア工房「TSUBAKI LAB」はこちら↓
https://tsubakilab.jp/

しかし、和田さんが出した答えはアベマキ学校机プロジェクト。売りものではありませんでした。それはなぜだったのでしょう。

「製品化を考えることはできます。でも、それでは製品を購入した一部の人しか恩恵にあずかれません。製品化よりもまず、地元の木材を使い地元の人がその恩恵を受ける必要があると考えました。」

さらに、里山再生につなぐには単発のプロジェクトで終わらせず、循環し根づいていくしくみが必要でした。ここで鍵となるのが『学校』『机』『人のためにつくる』ことでした。

なぜ学校なのか?なぜ机なのか?

プロジェクトを地域の中で動かし、広げていくために着目したのが、地域のコミュニティの中心である学校でした。大人から子どもだけでなく、子どもから子ども、子どもから大人へ。縦にも横にも広がるしくみは、学校ならではかもしれません。

また和田さんは木工のワークショップを行っていた経験から、日常的に使うものを自分でつくれることが重要だと考えていました。

そこで、アベマキの特性である堅さを活かせるものとして考えたのが、子どもたちが6年間使う机でした。

毎日アベマキ机に触れる。そこから育まれる地元の木や里山との絆はどんなに強いものになるのだろう。そうと思うとワクワクします。

自分の思いをのせて、手を動かす大切さ。

そして最後の鍵となるのが、誰かのために手を動かしつくること。これについて和田さんは、「自分の思いをのせて、何かすることに意味がある。」と言います。

自分のためではなく、誰かのために、思いをのせて手を動かす。それはまるで里山再生そのもののように感じます。
またアベマキ学校机プロジェクトが実現したことで、「お金ではない価値観で人が動くことが実証できた。」のだそう。

美しい里山を残したい。地域のみんなが実は心の中に抱えていた思いを、学校机プロジェクトは掘り起こしたのではないでしょうか。

プロジェクトの今後の課題は、携わる人が変わっていく中でどう継続していくかだそう。でも天板の付け替え作業に励む子どもたちの表情を見れば、この貴重な体験の機会を子どもから奪いたくないとみんなが思うはず。千年先の美濃加茂市に美しい里山を残すための新しい伝統として、根づいていってほしいと願わずにいられません。

美濃加茂市ではアベマキ学校机プロジェクト以外にも、『森のようちえん』、給食で子どもたちが使うお椀をパパやママ、おじいちゃん、おばあちゃんがつくる『アベマキMy椀プロジェクト』など森や木を活用してさまざまな取り組みを行っていて、今後がとても楽しみな街。機会があればぜひ、美濃加茂市を訪れてみるのもいかがでしょうか。