千年先の未来にも美しい里山を残したい。Part 2
岐阜県美濃加茂市・アベマキ学校机プロジェクト
天板の付け替え作業編 その②
岐阜県美濃加茂市のアベマキ学校机プロジェクトの第二弾!今回は、学校机プロジェクトの根幹である美濃加茂市の「里山千年構想」についてもお届けします。
虫食い穴があること、修繕して使うことを当たり前に。
6年生の作業開始前、市役所農林課の山田さんに1年生の教室でアベマキ学校机を見せてもらいました。
「この机、よく見ると穴があるんです。」
確かに、市販の机にはない小さい穴がポツポツあります。それは木を無駄なく使うため、あえて穴がある部分も使っているから。木材のきれいな部分だけを使うと無駄が多い。歩留まりが悪ければ木が使われていかず、本来の目的である里山整備も進まないといいます。
「今の大人世代はこういう穴あきの製品は買わないですよね。でも子どもの頃から穴あきが当たり前になったら、大人になってからも買いますよね。」
穴あきだって個性のひとつ。傷がついても、ひび割れしても直して使えばいい。
みんなが当たり前にそう思えるようになったら。里山が再生できるだけでなく、私たち自身も今よりずっと穏やかで心豊かに暮らせそうな気がします。
百年ではなく、千年単位で里山を考える。
「山之上に暮らす50代、60代の人でもアベマキという木を知らない。それほど山離れが進んでいるということです。」
と話してくれたのは、可茂森林組合の井戸さん。60年以上も放置され荒廃した里山を元に戻すのは並大抵のことではありません。木の成長に時間がかかることもありますが、なにより里山とともに生きる私たちの意識が変わる必要があるから。
「アベマキの机を使った子どもたちが大人になった時に、この中のたった一人でもいいからアベマキの机を自分の子どもにも使わせたい、美濃加茂の里山を守りたいと思ってもらえたらいいなと思っています。里山の再生は次の世代、そのまた次の世代へとつないでいく必要があるもの。だから里山千年構想なんです。百年では足りない。」と山田さん。
平成25年に始動した美濃加茂市の里山千年構想は、昔からの山の姿を取り戻し、本当の里山の魅力を再生することをめざし、千年経っても変わらない風景を残すことを掲げています。
里山整備、資源活用、里山活用という3つを柱に進められていく里山の再生。
再生へのアプローチのひとつがアベマキ学校机プロジェクトなのでした。
アベマキ学校机プロジェクトによる変化
学校机プロジェクトのスタートから3年。実際に、少しずつ変わりはじめているそう。2015年ウッドデザイン賞の優秀賞、2018年キッズデザイン賞の奨励賞・特別賞を受賞したこともあり、周囲からも理解されてきたといいます。
また可茂森林組合で働きたいという若者も増えているそうで、4月からは2名の女性も加わります。
「美濃加茂の山の取り組みを知り、そこに関わりたいと入ってきてくれています。」
と話す井戸さん、うれしそうです。
市役所内でも他の課から里山と連携したいという声も増えているそう。
今後の美濃加茂市の取り組みもますます気になってきました。
学校机プロジェクトに参加したくなる理由は?
この日も元先生が応援に駆けつけ、小学生の作業をお手伝いされていました。それに子どもや孫のためにと里山の奉仕作業に参加する人も増えているのだとか。
自分のためではなく、次の1年生のために一生懸命に手を動かす。そうした子どもたちの姿は、大人たちの心も動かしはじめているようです。
学校や行政、森林組合、岐阜県立森林文化アカデミー、地元企業、そして地域の大人たちへと広がりをみせるアベマキ学校机プロジェクト。
どうしてみんなが積極的に参加したくなるのか気になりませんか?
そのあたりをプロジェクトの発案者である和田さんにお伺いしましたので、次回お届けします!