千年先の未来にも美しい里山を残したい。 Part 1
岐阜県美濃加茂市・アベマキ学校机プロジェクト
天板の付け替え作業編 その①
岐阜県美濃加茂市にある山之上小学校で2015年にはじまった「アベマキ学校机プロジェクト」。
6年生が新1年生のために地元の木材を使った机づくりをするという、心がほっこりするストーリーに惹かれて取材を開始してみると、これが実は千年先の里山づくりにつながるとても壮大な取り組みでした。
そこで、子どもたちのアベマキ学校机づくりをご紹介するとともに、アベマキ学校机プロジェクトを通して見えてくる里山を取り巻く現状や次世代につなごうと奮闘する大人たちの思いをお届けしたいと思います。
電動ドライバー上手な小学生。
小学校を訪れたのは、まだ寒い3月のある日。
まもなく卒業を迎える6年生たちが、新1年生の子が使う机の天板のつけ替えを行うというのでお邪魔させていただきました。
5年生の冬にアベマキの伐倒を見学することからはじまり、製材・乾燥工程の見学、天板づくりの一部も体験してきた彼らは慣れたもの。
市役所の農林課の方や可茂森林組合の方から指導を受け、天板のつけ替え作業を開始するとガガガッという大きな音もものともせず、丁寧に作業を進めます。
新1年生が6年間使い続ける机だから失敗できないし、手は抜けない。
彼らのそんな思いが伝わってくるような真剣さです。
ちなみに山之上小学校では毎年伐採した竹でつくる「竹あかりアート」が行われていて、電動ドライバーは使い慣れた道具なのだそう。みんな職人さんみたいでカッコいいのも納得です。
アベマキ学校机プロジェクトが生まれた理由。
ここで美濃加茂市役所農林課の山田さんにアベマキ学校机プロジェクトについて伺いました。
すると、「いまの人にとって里山は価値のあるものになっていませんよね。」と仰います。価値がないから里山に関心を持たないし、手をかけることもなくなり荒れていったのだと。
荒れた里山を整備して元に戻していくためには、もう一度里山を価値あるものにしていく必要がある。そのために美濃加茂市の里山を整備していく中で多く生えていたアベマキを有効活用できないかということから学校机プロジェクトが生まれたそうです。
地域の木で、地域の子どもたちが毎日使うものをつくる。
「アベマキを使って何かできないか。」
山田さんたちは、当時岐阜県立森林文化アカデミーで講師をしていた和田さんに相談します。
アベマキは重く堅いため木材としての利用価値は低いとされ、昔から薪として使われてきました。そのため木工製品としての利用事例もなく、乾燥や製材の方法さえも未知。
製材を依頼された(株)丸七ヒダ川ウッドは東濃ヒノキを扱う製材会社で、アベマキを製材した経験はなく刃物が負けてしまうほどの堅さに苦労したといいます。それでも協力してくれたのは「地域の木で地域の子どもたちが使うものをつくりたい」という山田さんたちの思いに共感してくれたから。
行政と森林組合、山之上小学校、地元企業、岐阜県立森林文化アカデミーなど多くの人の共感と協力がなければ実現しなかった奇跡のプロジェクトなのでした。
(森林組合の方や和田さんに伺ったお話も、また後日お届けします!)
里山の未来を託された子どもたち。
ところで主役である子どもたちの反応はどうなのでしょう?山之上小学校の先生に伺いました。
「子どもたちは5年生で木の伐倒を見学し、その時にアベマキという木や里山の現状を教えてもらいます。その後に社会科で林業を扱うとたくさんの意見が出ます。それだけ木や里山に対しての興味や関心が高くなるということだと思います。」
実際に山に入り、木を見て、手を動かすことで多くのことを感じ、吸収しているのですね。
「子どもたちは言葉にはしませんが、学校机プロジェクトに関わる大人たちから里山の未来を託されていることも感じ取っているように思います。こうした取り組みは学校や教員だけではできないことですから、学校としても素晴らしい学びと捉えています。」
実際この日も作業する子どもたちの眼差しは真剣で頼もしく、ちょっと感動するほどでした。
なぜこの学校机プロジェクトが千年先の里山づくりにつながるのか。気になりませんか?
次回、お届けしますので、ぜひおつきあいください!