ミニチュアな世界から広がる、創造の無限大。息づかいまで聴こえてきそうな作品たち。
兵庫県豊岡市生まれ。現在、地元豊岡市に活動拠点をおく彫刻家の美藤圭さん。人物や動物などの生き物をモチーフに木彫作品を数多く生み出しています。その作品からは哀愁や人間臭さまでもかもしだし、見る人々を魅了しています。
彫刻家としてのきっかけは近所のおじさん。
18歳の時に「ものづくりで飯を食いたい」という想いから、高校卒業後に飛騨高山の専門学校『飛騨国際工芸学園』へ入学。そこで手工具や木工機械の扱いなども含めて家具の作り方を学びます。
現在は家具以外にも彫刻の制作活動をメインとし、各地で精力的に作品を発表し続けている美藤さんは、彫刻を始めたきっかけは、近所のおじさんだったと言います。当時22歳だった美藤さんは、近所のおじさんから囲炉裏に鍋を吊るす自在鉤を作ってくれと頼まれ、楠で50センチくらいの鮭を彫ったのだそう。そこから彫刻制作がスタートしました。
家具の工房やメーカーに就職していた美藤さんは、当時、働きながら端材でスプーンやお皿を彫っていました。また、高山で「彫刻部」という社会人サークルがあり、そこで初めて人物を彫ったのだといいます。
家具と彫刻の工房『2B works』を設立。
2015年、地元豊岡に戻り、家具と彫刻の工房として「2B works」を設立。アトリエは実家すぐ横の元倉庫。元々入っていた農機具や肥料などを出し、木材を加工する機械などを入れ制作スペースを作ります。当初は家具製作と彫刻制作の両方を両立させる予定でしたが彫刻の方が盛り上がり、現在はそのほとんどが彫刻の仕事なのだそう。
今にも動き出しそうな温度感じる作品 その制作への想いとは
美藤さんは作品について、哀愁や人間臭さが出るように彫っていると言います。「あぁ、こんな人いるな」とか「この人知ってる」といった、何となく共感できる風景、また作品と対峙した時、その日の気分や場所、タイミングで見た人それぞれが自分の世界で味わえるような、作品にすぅっと思いをめぐらせれる、そんな作品を作りたいと言います。
作品を見ていると、そこからはまるで話し声や息づかいまでが聞こえてきそうな、またふとした瞬間に動き出しそうな、そんな不思議な世界をまとっている美藤さんの作品は、見る者を自然と空想の世界へ引き込みます。
そんな作品の一部をご紹介します。
最近よくご注文いただくのが愛犬の肖像。手のひらサイズとても小さな作品ですが、そのリアリティには迫力があります。置く場所によって見え方も変わり、さまざまな表情をみせてくれます。
普段から描き溜めている人物スケッチから生まれた作品。こちらも10㎝という小さな作品ですが、その表情や動きには人間臭さが盛り込まれており、妙なリアル感がにじみでてきます。見ているとサイズがわからなくなるようなそんな世界を醸し出します。
「普段から考え込む癖があり、悶々としながら製作していると気分の浮き沈みもあります。そんな時は外に出て、何も考えずに深呼吸すると、頭からモニョモニョと何か出ていくような気がします。自分にとって彫刻は自分自身と向き合う時間であり、悶々としている自分をリセットする時間でもあります。」
と語る美藤さん。
作品が持つリアルな表情、すぅっと空間に溶け込むその空気感は、作者自身の持つ魅力なのかもしれません。
今後は、海外でも展示をしたり、お店の看板なども制作するなど彫刻で出来る仕事をもっと増やしていき、街のそこかしこに溢れればいいなと今後の展望についても教えてくださいました。
いつか訪れた先々で美藤さんの作品に出会える日が来るのが楽しみですね。
木彫作家 美藤 圭(びとう けい)
1986年 兵庫県豊岡市生まれ
18歳の時に「ものづくりで飯を食いたい」と思い、岐阜県は飛騨高山へ。
専門学校で家具のデザイン、製作を学ぶ。
デザイン事務所、家具工房、家具メーカーを経て2015年、家具と彫刻の工房「2B works」として独立。
日々の人間観察やスケッチの蓄積から人間臭さや佇まいを抽出して妄想のフィルターを通すことで、潜在的な部分で共感が得られたり、見る人のイマジネーションをかきたてるような作品を目指す。
2bworks HP:http://bitokei.com
E-mail:2bworks66@gmail.com
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<出版物>
2016年 写真集「めぐるぐる」を出版
<展示情報>
美藤圭木彫展「おもいおもい」
日時:2016年3月7日 〜 3月26日
会場:喫茶モノコト〜空き地〜
住所:名古屋市千種区内山3-28-1ちくさ正文館2F