森林や林業は好奇心を掻き立てるもので溢れている

森田 綾子 さん(岐阜県立森林文化アカデミー クリエーター科2年)

 

大学3年のとき、自伐林家であった祖父が他界。そのため、「山をどうすればよいのか、どこにあるのかすら分からない。今の時代、山は負の遺産だ」と周囲の大人たちは口々に言うようになりました。こうして直面した現実は、幼いころから憧れを抱いていた林業のイメージと大きくかけ離れたものでした。そして、林業に対して強く関心を持つようになり、大学卒業後すぐに岐阜県立森林文化アカデミーへ進学。

※自伐林家とは:自分の持ち山において樹木の伐採から搬出、出荷まで自力で行なう人のこと

 

課題研究では市場価値の低い“スギの黒芯材”を有効活用できないかと研究中。自ら製材することも

課題研究では市場価値の低い“スギの黒芯材”を有効活用できないかと研究中。自ら製材することも

 

1年次は森林調査を実践したり、造林についての講義やチェーンソーの操作実習を受けたりと林業に関する知識や技術をメインに学んできました。そうした授業だけに収まらず、学外でもどんどん人とつながり、興味をもったことは次々とチャレンジ。例えば、林業架線を設置する際にドローンを用いて楽にできないかと、学内にある演習林で共同実験したことも。山中で伐採された原木を運ぶために張られた架線は大変重く、設置・運搬に労力がかかることから思いついたもの。さらには、東京都在住で恵那市に山を持つ森林所有者と知り合い、森林空間をコンサートホールに見立てて音楽祭を実施するプロジェクトに関わるなど、さまざまな取り組みに携わってきました。彼女を突き動かすのは“好奇心”。「どれだけ知っても分からないことだらけ」と笑う森田さん。持ち前の行動力でこれまであらゆる事業体へ赴き、積極的に話を聞いてきました。「めっちゃ生意気なことを言ったり、トンチンカンなことを質問したりしたけど、真剣に向き合ってくださる方ばかりでした」と大先輩たちの懐の深さを実感。「その人たちに自分が何を返せていけるのか」と自問自答を繰り返します。

 

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音が反響する谷の地形を生かして山の中にステージを設え、コンサートを開催するなど、山を楽しむあらゆる可能性を仲間たちと探っています

音が反響する谷の地形を生かして山の中にステージを設え、コンサートを開催するなど、山を楽しむあらゆる可能性を仲間たちと探っています

 

卒業後は木材市場に就職予定。「市場には、丸太だけでなく『木』を中心に色んな人が集まってくる。すごく面白くて魅力的な世界」と話します。一般の人は存在すら知らないかもしれない市場の世界をいかに知ってもらうか。彼女の模索はまだまだ続きます。

 

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森田 綾子

岐阜県立森林文化アカデミー クリエーター科2年
兵庫県出身。神戸大学農学部卒業。川上から川下まであらゆるジャンルについて学びながら、自らと森林との関わりを探究中。林業女子会@岐阜に所属。