身近な生活から、震災時の備えにもなる組み立て材「組手什」
「組手什(くでじゅう)」とは8.5cmごとに1.5cm幅の凹みが施された平板材です。凹み同士を組み合わせることで“誰でも簡単に”いろいろな大きさの棚や箱などを作ることができます。端材まで無駄なく使いたいと2009年に開発されました。身近な収納や家具はもちろん、災害時には物資の仕分けや避難所の仕切り、さらには子供の遊び場まで。時と場合に応じて最適の姿が生まれる応用性の高さが特長です。今回は組手什の生産と品質担保を担っている長坂木材工業株式会社の長坂洋さんにお話を伺いました。
開発で重要視したのは、使いやすさと作りやすさです。通常業務の隙間時間などに作ることができ、在庫にしておけて、身近で使える多用途なものを目指しました。建具職人からアイデアをもらったことでこの商品が生まれ、2009年には名古屋市那古野にある環境関連NPOの事務所を組手什で全面改装しました。以降組手什は多くの場面で活躍します。2010年に名古屋で開催された「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」を皮切りに、環境展示会「エコプロダクツ2010」、「森林から始まるエコライフ展」でもCOP10の組手什が使われました。それから2017年まで毎年、補充して同じ組手什を大切に使いながらブース展示は続いています。
組手什の利用用途の広さと社会的意義を再認識したのは2011年3月11日の東日本大震災でした。5月に国土緑化推進機構の「緑の募金」の支援で鳥取県、愛知県から組手什の寄付が行われました。災害時の問題の1つが、支援物資が山積みになり支援が停滞すること。組手什はそれぞれの場所、時期において臨機応変な整理整頓ができるため、支援物資の整理に役立ちます。また避難所、仮設住宅へも送られ、下駄箱、傘立て、テレビ台などに使われました。2015年には、その経験から熊本地震の震災支援でも支援が行われました。熊本県森林インストラクター会が中心になり、組手什の配布、組み立て支援を行い、多くの方が笑顔になりました。その後の2016年・2017年のエコプロダクツでは、熊本県生産の組手什での展示が行われています。
組手什は特許をとっていません。ひと声かければ誰でも作ることができ、組み合わせを変えて思い思いの形に仕上げるのも自由です。「とにかく広がってもらい、地元材を知って使って手に取ってもらうのが第一義」と長坂さんは話します。仲間と地域、幼児からお年寄りまで世代を超えて一緒に組手什の組み立て作業をする光景。そこでは知恵や工夫を共有できるはずです。また地元材の組手什を買うと、支払いの一部が生産者に還元され森林整備に使われます。長坂さんは“おかげまわし”と呼ばれるこの仕組みで地域の生産者と消費者をつなげ、より良い地域同士のつながりと相互補助の関係が生まれて欲しいと願っています。
組手什の生産拠点は鳥取県・愛知県・宮城県他、全国へ広がっています。また、東京・横浜・大阪・神戸・広島の東急ハンズでも購入が可能です。徐々にではありますが、各地域で確実に広がる組手什とそれによって生まれるつながりがあります。長坂さんの夢はまだまだ終わりそうにありません。
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事業体名:長坂木材工業株式会社
住所:愛知県名古屋市東区矢田東1-7
電話番号:052-711-5257
メールアドレス:nagasaqa@live.jp
ホームページ:http://www.geocities.jp/nagasaqa/
創案者(5名)
都築宏行(木工房、〒444-0423愛知県西尾市一色町一色乾地126-1)
渡辺径(あいちの木で家を造る会、愛知県名古屋市中村区那古野1丁目豊嶋ビル201)
長坂洋(長坂木材工業株式会社、愛知県名古屋市東区矢田東1-7)
丹羽健司(木の駅プロジェクト委員長、組手什おかげまわし協議会代表、島崎山造り塾顧問、杣の杜学者副代表等)
藤田充(賀露おやじの会、〒680-0909 鳥取県鳥取市賀露町南5丁目2433番5号)