針葉樹の家具作り「studio Jig」

「“概念を変える家具作りを」。そう語るのは「studio Jig(スタジオ ジグ)」木工作家の平井健太さん。家具と聞くとどのような家具を想像しますか?誰しも家具と聞いて思い浮かべる一般的なイメージがあると思います。一方で、平井さんはそうした“一般的な概念を覆す”モノづくりに取り組んでいます。きっかけは大学生の時。大学の課題に対し、“既成概念を疑う“ことを意識しながら取り組みました。あえて、そのような意識を持つことで奇抜な着想を得ようとしていたそうです。こうした取り組みがstudio Jigの家具作りの根底にあります。

家具業界では「針葉樹で家具は作れない」といったことをよく耳にします。イスやソファなど、耐久性を求められる家具には針葉樹よりも硬い広葉樹が向いているからです。一方で、studio Jigは、そのような社会通念を覆す針葉樹の家具作りを行っています。自身の理念が実現できれば、それは針葉樹の新たな使い道が認められたことだと平井さんは言います。

舞台となるのは、奈良県川上村。ここは日本を代表するスギの名産地です。家具製作にはこの川上村で採れる「吉野杉」*を利用しています。吉野杉は節が少なくてまっすぐ、かつ年輪が緻密で強度もあり、樽・桶材として重用されるほど香りが良いと言われています。そうした吉野杉の特性を最大限生かせる作品作りを意識しています。また、技術的な面でも工夫を凝らします。家具として強度を確保できるように、従来の「仕口(しぐち)*を持たず、曲げ木を多用。「素材」と「技術」のどちらが欠けても実現不可能な、特別な家具を製作しています。

*吉野杉:日本三大人工美林の1
*仕口:2つ以上の部材を交差して接合する方法

針葉樹の座椅子

子どもの頃からモノづくりに興味があったという平井さんは、大学で建築デザインを専攻しました。卒業後は、大阪の建設会社にて主にオフィスビル等の設計をしていたそうです。しかし、自身の手を使ってモノづくりをしたいという思いから木工を志し、2年間、岐阜県高山市にある「森林たくみ塾」で木工の基礎を学びました。卒塾後は3年間アイルランドの個人工房で修行を積み、帰国後独立をしました。帰国する際、日本で今後木工をするのであれば、日本の抱えている林業の問題は見過ごすことはできないと感じ、スギやヒノキを活用することが必須条件であると考えました。

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近年、大量生産、大量消費により、モノの価値が極端に失われつつあります。その中で、11つを丹念に作り上げた、長く付き合える家具を提供し、経年変化がもたらす木材の美しさを広めていきたい。そして、人々の持つ“モノ”に対する価値観を変えていきたい。そんな熱い思いを込めて日々、木と、家具と向き合ってモノづくりに励んでいます。

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studio Jig 平井健太
電話:070-2837-5298
メール:info@studiojig.com
ホームページ:https://www.studiojig.com/