2035年に当たり前に木材のある社会へ「飛騨五木グループ」

“森林”をキーワードに林業から製材、設計、建築、木製品の企画や販売、EC運営、カフェ・ショッピング施設運営など幅広く事業を展開する「飛騨五木グループ」(岐阜県高山市)。飛騨高山を拠点として、木材の流通である川上から川下まで一貫して取り組むグループ企業は、森林業界では数少ないです。

1965年に創業してから現在まで、少しずつ事業を広げてきましたが、今も変わらず中核には“飛騨の匠”である木工職人の存在があります。

八野忠次郎

八野忠次郎

ルーツとなるのは八野忠次郎(1909-1993年)です。江戸末期から昭和まで9代続いた名工、阪下甚吉の弟子であり、飛騨五木グループ創業者・井上光の義父にあたります。大工として活躍していた忠次郎は戦争での負傷を契機に高校教師へ転身し、その傍ら高山祭の祭屋台の修理保存や、地元の文化財調査に尽力しました。

この飛騨の匠の血を受け継ぎ、木工の伝統文化を継承し続ける井上家が、現在のグループの中核を担っています。

井上光が個人で工務店を創業したのは、昭和40年(1965年)6月のことでした。早くも昭和46年には、国指定重要文化財である「旧田中家」に関連する公共工事を受注します。

昭和50年代に入ると、現在の「札幌かに本家」の店舗工事を各地で手がけました。その姿は遠く離れた奈良や京都の都へ赴き、建物の造営に励んだ、いにしえの飛騨の匠の姿に重なります。昭和55年11月には有限会社井上工務店に組織を変え、企業としての一歩を踏み出します。

飛騨五木,住宅,goboc設計室

住宅施工例

その後、平成の時代に入ると、同社はマンション建設や公共工事に積極的に参加するとともに、伝統の技を生かし、国指定重要文化財「旧若山家」の解体移築工事も手がけるなど、業容を拡大しながら企業の経験を積むことになります。

本社の移転や美濃エリア(岐阜県南部)へ進出したのもこのころです。同社は山で木を買い付け、製材し建物を築く会社へと成長しました。

飛騨五木,井上工務店,林業,伐採

一方で、飛騨だけでなく、日本の森林を取り巻く状況は刻々と変化していました。住宅建築などには輸入材が多く使われるようになり、林業は衰退。全国で山が放置され、地域の文化を作り出してきた木々がうち捨てられるようになっていたのです。

木材は木質バイオマス発電の燃料としても利用されるようになりましたが、ただ燃やすだけでいいのかという問題もありました。木の国、飛騨に生きる会社として、これをどうにかしなくては、という思いが社内に広がっていました。

すでに同社は、飛騨の暮らしに根ざしてきた5つの木=飛騨五木を使った家づくりを進めてきました。そこで、この五木をブランド化して、全国に建材として流通させる商社が作れないかと2015年に誕生したのが「飛騨五木株式会社」でした。このほか金融面をサポートするグループ会社も2016年に設立しています。

飛騨五木グループ本社

手前はgoboc cafe、奥は㈱井上工務店と飛騨五木㈱の本社事務所

飛騨五木グループでは、それぞれ新たな取り組みを進めています。井上工務店はこれまでの建築事業に加えて、エネルギー事業に参入しました。2017年には高山市荘川町の温泉施設で、木質バイオマス燃料を使って熱を供給する事業を開始。高山市と20年間にわたって熱を供給する協定を結んでいます。

桜香の湯に導入された木質バイオマスボイラー

桜香の湯に導入された木質バイオマスボイラー

飛騨五木株式会社では木を生かした自社商品の企画に取り組んでいます。ヒノキの樹皮で染めたベンチマットやクッション、飛騨のスギで作った道具箱など創業1年半で200品目を超える商品の取り扱いを進めています。

カフェの運営や、宿泊も可能なレンタル施設も高山市で手がけています。名古屋では就職支援事業も含めた支店を設け、岐阜県では「森ワクマーケット」というショッピング施設も展開しています。

現在は最初のステップとして地元である高山市や岐阜県内を拠点にして事業を拡大させ、その後、全国に向けての展開を視野に入れています。

そして、最終的に目指すのは木材を核とした社会システムの設計に関わっていくこと。生活の中のあらゆるシーンで木材が使われるようになることで、日本全体の森林が、地域が、より元気になっていくと考えています。

ここまで歴史や取り組みについて長く紹介してきましたが、森をキーワードに横断的に幅広く活動していることがよく分かります。なぜ、ここまで情熱を持って取り組めるのでしょうか。それは創業者である井上光さんの存在が大きく影響していると言えるかもしれません。

井上工務店創業者の井上光さん

創業者の井上光さん

「今までたくさん壁はあったよ。でも、どんなことがあっても打開できる。悲観したらおしまいや。次のステップを考えることが大事」

光さんが語ってくれた印象深いフレーズです。現状を見て、未来を考えることを怠りません。それは、現在の会社に息づく精神でもあります。

創立時の小さな工場から今では林業部を持ち、伐採班や製材工場、木材乾燥機を有するほどの規模に。川上から川下までの生産体制が整った、全国でも数少ない工務店となりました。そして、建築以外の分野にも次々と乗り出しているのです。

※光さん取材記事はこちら → http://moriwaku.jp/activity/4790/

2035年に当たり前に木材のある社会へ。この夢の実現に向けて、飛騨五木グループでは日々一歩一歩前進しています。


飛騨五木株式会社(本社)
岐阜県高山市江名子町2715-11
TEL 0577-33-0480 FAX 0577-33-0144
◎ホームページ http://goboc.jp
◎日本の森がもっとワクワク http://moriwaku.jp
◎Facebook https://www.facebook.com/hidagoboc

株式会社井上工務店(本社)
岐阜県高山市江名子町2715-11
TEL 0577-33-0715 FAX 0577-33-0144
◎ホームページ https://inouekoumuten.co.jp