香りを通じて世界を変える!正プラス株式会社
正プラス株式会社
岐阜県高山市清見町に位置し、のどかな田舎風景に溶け込む「正(せい)プラス株式会社」。周囲を木々に囲まれ、森の優しい香りが漂います。
同社は自然と人が疎遠になりがちな現代において、香りを通じて人と地球の関係を根本的に捉えなおそうと生まれた会社です。その取り組みの1つが「yuica」。私たちが木の香りとしてイメージしやすいヒノキやスギなどの一般的なものをはじめ、クロモジやニオイコブシ、ミズメザクラなどの聞き慣れない樹木からもエッセンシャルオイルを抽出し、製品づくりを行っています。全部で13種類のベースとなるものと4種類のブレンドの香りがあります。
木の伐採からオイルの抽出まで、すべての工程が手作業。商品の1つ1つがとても大切に、愛情をこめて作られています。
木材がふんだんに使われたオフィスに入ると、自己紹介も早々に、明るく元気いっぱいな出口砂智子(いでぐち さちこ)さんが商品を実際に使いながら話を聞かせてくれました。
yuicaではヒノキだと木部(幹の部分)、枝葉、葉の3つからオイルを作っていますが、それぞれ香りが異なっています。それは精油が関係しているためです。精油とは、植物が虫や菌などの外敵から身を守るために作るもので、普通は枝葉に含まれます。しかし、ヒノキ科だけは木部にも防虫・殺菌作用があるという特徴があります。
確かに木部からはどっしりと深みのある香りが、枝葉ではふわっと軽みのある香りがしました。
こうした同社のエッセンシャルオイルは、柔軟剤や芳香剤などの石油系の香りとは大きく異なります。後者は人工的に成分を作り出しているので、香りがずっと続きます。つまり体内にも残ってしまう。化学物質が身体の中に留まると思うと、あまり気持ちの良いものではありませんよね。一方、自然の香りは温度、湿度によって揮発性の成分が先に飛ぶこともあるので、すぐ変わったり消えたりしてしまいます。それは身体に入っても一緒。だからyuicaは遮光性を持つ容器に入っているのです。
しかし天然成分でできたyuicaの香りでも、ずっと一種のみ嗅ぎ続けると体に毒となることもあるのだそう。森も同じようなことが言えます。スギ林なら一面スギだけ、ヒノキ林ならヒノキだけなのは良い状態だとは言えません。スギ・ヒノキ・ミズメザクラなど、針葉樹も広葉樹も色々な樹種があった方が、根の張り方や落葉の栄養が多様で土が肥え、結果良い木が育ちます。「土を見ればその森が良いのか悪いのかすぐわかる」と、実は“土フェチ”な出口さん。
また、何より同社が他と違うのはクロモジやニオイコブシなどの、林業で「未利用材」と言われる樹種を使っているところ。クロモジはリラックス効果を持つ成分が豊富に含まれています。一方ニオイコブシは元気の出る効果がある成分を持っており、私たちの健康維持にとっては有用性の高い存在なのです。
今の林業は人手不足などの理由から森の手入れが十分に行き届いていないことが多く、不健全な森が増えてきています。「未利用材」を使うことは、森の手入れを進めることになり、林業にとっても良い効果があると出口さんは言います。例えばCO2の吸収で地球温暖化の防止や、根がしっかり張ることで土砂災害の防止にもつながります。「飛騨の森から人や地球を守っている」という自負を持ち、商品づくりに取り組んでいます。
出口さんはyuicaの香りで都会と森をつなげたいそうです。「材になったものとしてはよく見かけるヒノキ。でも、その生きている姿を知っている人ってそんなにいないでしょ。ニオイコブシは花を咲かせて虫を呼ぶのに対してその木部は防虫成分を持っていたり、ヒノキ・アスナロ・サワラは葉っぱの後ろにあるアルファベットのような形で見分けられたり。そういった面白さが木にはたくさんあります。木を覚えると、今まで大きな『森』って見えたものに表情が表れる」と語ります。
「わざわざ山へ行き、取りにくい場所から原料を採取する。枝葉15kgで20mlしかオイルはできません。効率悪いでしょ。でも新しいことってそういうものなんです。だから今は『世界で一番新しいことをやっている』と思って仕事をしています」と語ってくださいました。
経済発展のためには環境を壊さなければならないことが多々あります。しかし、環境を守るためには開発をやめなければいけない。そんな風にどちらかが正になればもう一方が負になってしまう傾向がある現代で、どちらにも「正にプラス」を目指す取り組みを応援したいと思いました。
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正プラス株式会社
岐阜県高山市清見町牧ヶ洞846
TEL 03-3423-7156(お問い合わせ専用)
FAX 03-3423-7992
MAIL info-seiplus@sei-plus.com
HP http://www.sei-plus.com/
参考文献)
大野由起子 著 田畑貞寿 編著 (2011)『グリーンセラピー読本』技報堂出版