森林浴でリラックス 科学で証明された効果とは 

 

みなさんは緑=癒しというイメージをもっていませんか?
森林浴へ出かけてストレスを和らげよう!と考えたことはありませんか?

天気の良い日に森へ出かけて緑に囲まれながら大きく息を吸っていると癒されている気分になる方も多いと思います。なぜ森に行くと癒された気分になるのでしょうか…景色?音?匂い?それとも何か不思議なパワーが働いているのでしょうか?

森林浴でリラックス
その原因はフィトンチッド?

フィトンチッドとは木材に含まれる揮発性の物質です。
樹木から大気へ放出され、森へ入ると鼻を通じて感じることができます。フィトンチッドは元々ロシア語でフィトン=植物、チッド=ほかの生物を殺す能力という意味です。植物からでる揮発性物質は殺菌作用があるという意味になっています。
“森林の中には殺菌力を持つ独特の芳香が存在し、森の中にいることが健康な体をつくる”
という森林浴当初の定義からもわかるように森林浴は健康との関わりが深いものでした。最近ではフィトンチッドには殺菌作用だけではなくリラクゼーション効果も認められており、精神的な影響についても研究がなされています。私たちの心身へ影響を及ぼすフィトンチッドですが、実際にはドラム缶5000本の水に1㎖のインクを溶かした位の濃度で大気に含まれています。そんなに微量だと本当に影響があるの?と疑いたくなってしまいます。そこである実験を紹介します。

ライティング

群馬県利根川群の森林において、老人会の男女48名に対して森林浴の前後で血圧、脈拍数に加えて自律神経系と免疫の指標について森林浴の前後で測定を行いました。この実験では、マスクを使用して嗅覚を遮断したパターンとアイマスクを使用して視覚を遮断したパターンとなにも遮らないパターンを用意しました。すると血圧のパラメーターについて、嗅覚を遮断したパターンでも森林浴の効果が見られたのです!フィトンチッドは揮発性の成分で嗅覚によって効果が見られます。ということはフィトンチッドがなくても森林浴の効果が見られたということです。実は室内において森林の画像を視認しただけで自律神経系に反応が見られるという報告があり、視覚情報の影響が指摘されています。一方フィトンチッドだけの生理的影響も最近報告されており、森林浴においては複合的な要因でリラックスが促されているようです。

 

森林浴に出かけてみよう!

森林浴によってリラックス効果が得られることは証明されているようです…。
リラックス効果の一因であるフィトンチッドは針葉樹(スギ・ヒノキなど)に多く含まれており6~8月で森林の中で強く感じることができます。何だか最近気を張り詰めすぎているかも…なんて思ったら森林浴に出かけてはみませんか?
また花粉症が辛い人は、香りの製品を使うだけでも効果があるので試してくださいね。

参考文献)

近藤 照彦 武田 淳史 小林 功 谷田貝 光克(2011)
「森林浴が生体に及ぼす生理学的効果の研究」『日温気物医誌第 』74巻3号 2011 年 5 月
小林 功 近藤 照彦武田 淳史(2013)
「森林浴の歴史について」『群馬パース大学紀要 』15, 3-8