まるで炎?不思議な形の樹木の秘密
炎が燃えている?そんな印象を受ける外観をしている樹木があります。その名も、「カイヅカイブキ*」。
*「カイヅカイブキ(貝塚伊吹)」:学名 Juniperus chinensis cv. Pyramidalis
イブキ(ビャクシン)の園芸品種でヒノキ科ビャクシン属に分類される常緑小高木。高さは普通5~10mほど、ものによっては20m近くになるものも。本州から九州に至る各地に分布しています。
上の写真はカイヅカイブキの外観です。
この樹木は、生長するにつれて側枝(中心の幹から左右に出る枝)が、らせん状にねじれて主幹(中心的な位置を占める幹)に巻き付くようになり円錐形の独特な樹形になります。その姿は、まるで炎が燃えているようにも見えませんか?
おもしろ葉っぱと謎の現象!?
上の写真は、カイヅカイブキの葉っぱです。葉は密生しており、ほとんどの葉が鱗片状の葉*になっています。ヒノキの葉にも似ていますが、ヒノキと違いこちらの葉は立体的についているのが特徴です。
*「鱗片葉」:うろこ状に重なる厚い葉。
実はこのカイヅカイブキの葉ではちょっと面白い現象が起こっているんです。
下の写真をご覧ください。
実はこの写真は同じカイヅカイブキを撮ったものです。葉の形がさきほど見た写真と随分と違いませんか?まるでスギの葉を思わせるような葉っぱです。カイヅカイブキの葉はまれに針状のものが出ることがあります。この現象を“先祖返り”といいます。先祖返りとは先祖の頃だけにあった形質*が突然その子孫の個体に出現するという現象です。ちなみに一度先祖返りした葉っぱは元の葉の形には戻りません。また、公園や庭等に植えられることが多く、綺麗な景観を保つためこの針葉は剪定されることが多々あります。そのため針葉が生えていないカイヅカイブキも多くあります。見ることができればラッキーかもしれませんね。カイヅカイブキを見つけた際はぜひ針葉の葉っぱの有無を確かめてみましょう!
*形質:生物のもつ形態的・生理的な特質のこと
ぐるぐる回る幹の不可思議
樹木の幹もねじれてとても個性的な形です。樹皮は赤褐色をしており、ヒノキの樹皮と同じように縦に薄くはがれます。この特徴的な樹木はどんな場面で使用されるのでしょうか?主に園芸として公園や家の生垣に植えられています。量的にはあまり多くはありませんが、床柱、花台、物置台や彫刻などにも用いられることもあるようです。
いかがでしたか?とっても個性的なカイヅカイブキの特徴をご紹介してきました。ぜひ、気になった樹木には近づいて観察してみましょう。樹木を近くでよく見てみるとこれまでは気づかなかった発見もできそうです。
参考文献)
鈴木和夫 福田健二(2012)『図説 日本の樹木』朝倉書店
林弥栄(2011)『山渓カラー名鑑 日本の樹木』 山と渓谷社
林将之(2010)『葉で見分ける樹木 増補改訂版』小学館
濱野周泰(2005)「原寸図鑑 葉っぱで覚える樹木」柏書房株式会社