“飛騨五木”、読めますか?

日本を代表する木工職人“飛騨の匠”が生まれた飛騨高山(岐阜県)。この地域には約350の樹種が存在していると言われています。

そんなこの地で、2014年にある木材ブランドが生まれました。その名も、「飛騨五木(ひだごぼく)」。スギ、ヒノキ、クリ、ケヤキ、ヒメコマツの5種類の木の総称です。

このブランディングには、飛騨高山から木材を広げるためのさまざまな思いが込められています。そこで、ブランド化に取り組んできた飛騨五木株式会社代表取締役の井上守さんに、誕生から今後の展開に至るまでお話しを伺いました。

井上守さん

飛騨五木株式会社代表取締役の井上守さん

― どういった経緯から飛騨五木は生まれたのでしょうか?

「もともとは株式会社井上工務店としてずっと建築に携わってきたのですが、将来的に経済規模が縮小していく中で、当然建築業界も縮小していくだろうということを見据えたとき、自社で製材をしていることや墨付け刻みができる社員大工を抱えているといった、自社の強みを表に出していくことを仕掛けていかないと生き残っていけないだろうという思いがありました。

飛騨五木,製材

製材

そんなタイミングで、『株式会社古川ちいきの総合研究所』代表の古川さんと出会う機会があって、工務店として強みを表に出していく取り組みを一緒にやらないかと声をかけてもらったんです。」

そこから、改めて地域の歴史などを振り返って学び直す中で、飛騨は良い材が採れるため江戸幕府の直轄地とされていたことや、奈良・平安時代から飛騨の匠が各地に派遣されており税を優遇されるほどだったことなど、はるか昔から全国で活躍していたことが分かってきました。

「木材産地としても、木工技術としても、こんなに歴史があるのに、飛騨の木材って全国に全然流通してないよねって話になって。じゃあ飛騨の木材をブランディングしようってなったんです。

そして、この地でずっと建築材として主に使われてきたスギ・ヒノキ・クリ・ケヤキ・ヒメコマツに絞ってブランド名をつけようと。色々名前を出し合った中で一番しっくりきたのが『飛騨五木』でした。」

飛騨五木のキャラクター

飛騨五木それぞれをモチーフにしたキャラクターたち

また、木材関連の勉強会などに参加していくうちに、他の木材産地とのつながりも増えてきました。中でも、岡山県にある「株式会社西粟倉・森の学校」の取り組みに衝撃を受けたと話す井上さん。小さな村を拠点に建材の生産だけでなく、地元の木材を活用してどんどん商品の開発・販売もするなど、商売として成り立っている実例を目の当たりに。

「『建築以外でも木の良さが引き出せるんだ!』と強烈に感じて、それだったらうちでもできるんじゃないかと。ただ、工務店の中でそれを形にすると薄まるかなと思って、じゃあ株式会社化しちゃおうということで、思い立ってから1ヶ月くらいで会社を設立しました。」

こうした始まりから現在に至る同社。創業から4年経ち、商品開発やカフェ等の運営、就職支援事業などジャンルにとらわれず活動を広げています。

― さらに飛騨五木を広げるために、今後どんな取り組みを進めていきますか?

「時代が変わっていくスピードが早いし、産業人口の減少や経済規模縮小といった社会の流れに乗っかっていくしかない中で、お金や木材などの資源をぐるぐる回して循環させていかきゃいけないし、そうやって持続可能な形にしていくための飛騨五木グループにしていかなきゃと思ってます。

それと、地元の若い子が外に出て戻ってきたときに働ける場所でありたいですね。それが今後の地域のためになると思うので。」

同社の核である木材を中心に、川上から川下までお金も事業も資源も循環させていけるようになることで、それが地域に還元されていく。だからこそ、勢いを止めずさらなる進化を遂げるべく、飛騨五木は動き続けます。

番外編

せっかくなので、飛騨五木それぞれの特徴についても紹介します!

クリ,ヒメコマツ

飛騨五木というブランド名に込められた思いと、それぞれの木の個性はお分かりいただけたでしょうか?皆さんの身の回りにある木材もどんな樹種で、どこから来たものなのか調べてみると、新たなストーリーが見つかるかもしれません。