伊勢神宮を守る森
みなさんは伊勢神宮へ参拝したことはありますか?信心深い人でなくとも、名前は聞いたことのあるのではないでしょうか?今でも年間800万人の方が参拝しに来るそうです。伊勢神宮(正式には神宮)には天照大御神をお祀りする内宮と衣食住を始め産業の守り神である豊受大御神が祭られて…と伊勢神宮の詳しい説明は置いといて、今回は伊勢神宮の建物を支えている宮域林に注目してみたいと思います。
伊勢神宮の建物をひとめみるとわかりますが「木がたくさん使われている!」ということに気付きます。この木はどこの木を使っているのでしょうか?実は御造営用材(神社を建てる木の材料)は鎌倉時代前期まで伊勢神宮の敷地内で調達されていました。しかし自然林であった敷地内の森林から檜の良材が取れなくなり、ほかの地域から材料を調達するようになります。しかし1923年に人工林を育てていく計画が策定され、敷地内でまかなえる計画が進みました。なんと200年の歳月をかけ建材となる檜を育てる目標だそうです。200年の歳月をかけて胸高直径1mの檜を育てるのが目標になっています。80年後の2013年に間伐材ながら建材として敷地内の檜が使用されました。(間伐材といっても樹齢80年の木です)一度森が消えてからもう一度森を復活させるために長い時間がかかるのがよくわかります。
神宮の宮域(敷地)は神域と宮域林に分けられ、神域の森林は神宮の尊厳を保つことを目的として自然の保護に努めています。一方、宮域林では五十鈴川の水源の涵養かんよう、宮域の風致増進、そして将来の遷宮を見据えた御造営用材の育成を目的としています。現在宮域林では850種の植物が確認されており、多様な生態系を維持していることが伺えます。宮域での自然林と人工林を分けることによって自然林の保護にも配慮したり、森林管理では、長期での計画となっているため間伐を強く行ったりしています。そのため自然林の多様性を失わず、人工林でも間伐によって多様な樹種が育ち多様性を生んでいるようです。この多様性によって、森林の多面的な機能への期待も高まっています。
人の寿命と木を育てる200年という時間スケールは一致しませんが、神宮という文化によって人と森の関係が途切れることなくつながっているのではないのでしょうか?今度伊勢神宮へ参拝する際は、宮域の木についても思いをはせてみるとまた違った歴史が感じられると思います。
参考
永遠の森|式年遷宮|伊勢神宮(2016.3.7)
http://www.isejingu.or.jp/sengu/forest.html
環境省_伊勢志摩国立公園(2017.3.7)