【後編】木製ホールドが切り拓く、クライミングの新世界
クライミングやボルダリング、皆さんはやったことがありますか?
岩や壁を登る“あれ”です。
2020年の東京オリンピックで公式種目に「スポーツクライミング」が追加されるなど、ますます注目度が高まっています。
クライミングには、スポーツクライミングやフリークライミングなどジャンルごとに呼び名もありますが、この記事では包括的な意味で“クライミング”を使うことにします。
ちなみにボルダリングはクライミングの一種で、約5m以下の壁を必要最低限の道具(チョークやシューズ)だけで登るもの。
ボルダリングを経験したことがある方なら、カラフルな樹脂製のホールド(手や足を引っ掛ける突起状のもの)が壁に散りばめられている光景を見たことがあるでしょう。
こうしたクライミングで使われるホールドは樹脂製が一般的です。
そんな中、このホールドに木を取り入れた、新たな楽しみ方が提案され始めていることはご存知でしょうか?
この動きを少しずつ加速させているのが、岐阜県大垣市にあるオリジナルクライミングブランド「MONKEY-HOLD」を運営する「株式会社Leawood」です。競技用から初心者向けまで幅広い木製ホールドの製造・販売を行っています。
これからますます熱くなるであろうクライミングの分野で、木製ホールドはどのような存在なのか、どんなふうに製造されているのか、木に吸い寄せられた森ワク編集部が突撃取材してきました!
前編(https://moriwaku.jp/activity/6443/)に続き、後編では活用例や使用者の声を紹介します。
素材の違いから生まれるもの
木製ホールドはクライミング業界において革命的なことなのかと思いきや、もともとは候補として挙がっていたものなんだそうです。しかし、簡単につくれて普及しやすく、世界中の人が楽しめるように、ということで最終的には樹脂製が選ばれるに至りました。
そんな木製ホールド、日本の中でも探せばあるようです。ただ、全国的に展開されているものはなく、初心者から競技用まで幅広く利用できる木製ホールドは、世界でも例が少ないだろうとのことでした。
樹脂製との違いは大きく2つ。手作業でつくるため一点物であるということ。そして、樹脂にはできない表現(見た目や触り心地、香りなど)を持っているという点です。
例えば、樹脂製は基本的にザラザラとした表面で、新品だと痛いくらいです。練習しすぎると指の皮がつるつるになることもあります。一方、木製かつ手に優しいオイル塗装(「MUKU-HOLD」)であれば優しい触り心地で、子どもや初心者でも違和感なく掴むことができます。
樹脂製はチョークやシューズなど専用のグッズが必要になります。靴下で登ろうものなら穴が空いてしまい、気軽に登ることができません。でも、同社が提案する「MUKU-HOLD」なら滑らかな肌触りなので靴下でもOK!
そんな噂を聞きつけてか、九州の小学校に木製ホールドのクライミングウォールを設置したいという問い合わせがありました。チョークやシューズがいらないし、子どもたちへの説明の手間も省けて、掃除も楽。クライミングの間口を広げることにもつながっています。
また、木製ホールドにすることで空間との調和も変わってきます。樹脂製はポップでかわいい空間づくりに向いていて、木製だと落ち着いた感じを生み出します。空間設計しやすいと設計士さんからも好評です。
クライミングにおける利用の幅を広げている木製ホールド、地味にすごいぞ!
世界に届け!木製ホールドのポテンシャル
競技用として見たときには、どのような可能性があるのでしょうか。
同社の競技用ホールドである「COBU-HOLD」は、滑りにくさと、ロッククライミングのようなリアルな岩感を持たせるため特殊な塗装が施されています。アウトドアブランド「THE NORTH FACE」が主催するボルダリングコンペの予選でもCOBU-HOLDが採用されました。
「予選会場となるジムのオーナーさんが『使っちゃおうよ!』って言ってくださって。少しずつですけど、浸透してきている予感はありますね。
選手たちからは『面白い』という声や、『ロッククライミングに似てる』と言われます。ロッククライミングでは、岩がゴツゴツしているので、登る人からするとどこがつかめるのか把握するのが難しいんです。つまり予測できない。どこをどうつかんだら自分にフィットするか探る必要があります。
そこがロッククライミングの肝なんですが、COBU-HOLDでも同じような感覚が味わえるんですよ!登る前に下から見上げたときの予想と、実際つかんでみた感覚は違います。その探る感じがロッククライミングに近いと。だから面白いと言っていただけるんだと思います」
さらに、ジムのオーナーさんや選手以外にも反応があります。それが、大会開催にあたってクライミングのコースをセッティングする「セッター」です。専門的なノウハウが必要な分野で、職業としても確立しているプロのセッターの目にも留まっています。
もちろん大会ではスポンサーに応じて使用するホールドが決まったり、強度テストにクリアしなければいけなかったり、さまざまな制約があります。その反面、「使いたい」と言ってくれる人がいるのも事実。
「やりがいはあるかなとは思っています。時間はかかりそうですけどね(笑)もちろん、良いという人もいれば悪いという人もいます。でも、そういうものがあってもいいでしょう?と思っています」と吉田さん。不安と熱意が入り混じった表情が印象的でした。
今はまだ駆け出しの段階。今後のことを聞いてみました。
「遊び心を大切にしたいです。一つのジャンルに偏りたくないので、世界中で木製ホールドを楽しんでもらえたらいいなあって思いますね。実は海外販売に向けて少し動いています。市場的に世界に目を向けないとごはんを食べていけないだろうなって思うので(笑)
ただ、いきなり世界に飛び込んでいくのも難しいので、地元・日本で認知を広めていきたいです。イベント出店も最近しているんですよ。簡易的な折りたたみのクライミングウォールもつくって、無料体験なんかもやってます。世界を見据えながら、まずは日本で木製ホールドをじわじわ広げていきます!」
一見、ただの木の塊に見えなくもない木製ホールド。一つのスポーツの中で、少し木の要素が加わるだけで、こんなにも新しい可能性が出てくるものなんだと気付かされた今回の取材。
ちょっとしたひらめきを形にしていく行動力だよなあ結局は、と、ひしひし感じたとともに、近所のクライミングジムを探し始めた編集部なのでした。
株式会社Leawood
岐阜県大垣市築捨町5丁目128番地1
★木製ホールドの購入は以下から↓
https://monkey-hold.com/