白樺のごとく柔軟なスタンスで。ものづくりに日々向き合う。

鈴木 岳人(たけと)さん

木工作家として、さまざまな木材を扱い活躍を広げる鈴木岳人さん。現在は、高山市国府に工房を構え、椅子や机・棚といった大きな家具から、雑貨などの小さな小物まで、魅力的な作品を数多く生み出しています。そんな鈴木さんに、木工作家になるまでの経緯と現在の取り組みについてお話を聞いてきました。

絵を描くことが好きだった幼少時代

東京都町田市に生まれ、神奈川県で育った鈴木さん。幼い頃は絵を描くことが好きで、昆虫好きの父とよく森に行っては昆虫採集をする毎日を過ごしていたといいます。小学生の頃、昆虫を描いた作品が市展に入選したことから、それをきっかけに積極的に絵を描くようになりました。

図面制作からカタログ制作まで行ったインテリアデザイナー時代

この頃に形成された価値観もあり社会人のスタートは東京にてインテリアデザイナーとして就職。クライアントとの打ち合わせを重ね、設計から発注、家具セレクトなど空間のマネジメントを行いました。
そこでは、現場での施工の手伝いから、その後の空間撮影、またカタログ制作までもとトータルで幅広い業務を行っていました。設計での仕事と現場での仕事を往復する中、現場での作業の楽しさを知り、ふと気がつくと頻繁に施工の手伝いをするようになっていたといいます。

幅広さと深さを学んだフィンランド留学

人生の転機はフィンランドへの留学でした。インテリアデザイナーの仕事を退職後、木工の道へ進もうとフィンランドへ渡ります。そして、フィンランドにあるラハティ市の専門学校へ入学。1年間木工の基礎を学び、また木工以外にも写真やデザイン、金属などさまざまな分野についても幅広く学びました。
翌年には、スウェーデンに渡り、より専門的に木工を学ぶため工芸学校CapellaGardenで木工技術を学びます。その後フィンランドHeinola市(ヘイノラ市)でも上級家具制作師コースへ転入し、さまざまな工房で実習を行うなど木工技術を深く学びます。その2年間でインターンを行うことも多くあり、3つ目に行ったインターン先、木製家具メーカーTetrimäki(テトリマキ)で、実物の家具から図面を起こし、家具制作を行う仕事も経験します。
鈴木さんは、この2年間に学んだことが、今の自分の原点としてベースになり、今に活かされているのだと語ります。

家具メーカーでは、家具の全体を把握する試作室に。

帰国後、今まで得た技術を活かせないかと高山へ移住し某家具メーカーへ入社。試作室に入り、新作の商品化に携わります。材の強度から実用性のある形状の試作、デザインなど、ここにおいても家具にいたるさまざまな分野を、全体を把握しながらの制作業務を行います。そんな中、個人的にも制作を頼まれるようになり、徐々に個人の活動にも枝葉が伸びていきます。

『KOIVU』として独立。

工房内の風景。ここで数人の作家と一緒に制作活動を行っています。

工房内の風景。ここで数人の作家と一緒に制作活動を行っています。

家具メーカーで3年間の勤務をしたのち、ひとりの木工作家として独立をします。高山市国府町にあるシェア工房に作業場所構え、『KOIVU』として活動をスタート。クラフト市や展示会に積極的に参加するなど、活動の幅を広げています。今はまだまだ発展途上、今後も制作をしながら自分の技術を磨き続けていきたいと穏やかな口振りで鈴木さんは語ります。

 

国府町にある工房周辺の風景。緑豊かな山々に囲まれたのどかな場所

国府町にある工房周辺の風景。緑豊かな山々に囲まれたのどかな場所

白樺のごとく柔軟に変化できるスタンスで。

白樺林

白樺林

屋号でもある『KOIVU』はフィンランド語で“白樺”といい、今後は白樺※のように変幻自在な存在として、“日々変化する世界に必要とされるモノとは何か?”を常に問い続けながらものづくりに向き合っていきたい。そして、自分の人生を楽しみながら生きて行けたらとものづくり人生への想いを語ってくださいました。

※白樺:木の種類。その木材からは家や家具が、皮からはキシリトールの原料、葉からはシャンプーの成分というように、様々な生活道具の材料として使われています。

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木工作家 鈴木岳人

『KOIVU』として高山を拠点に活動中。主に木製オーダー家具、建具、インテリア小物のデザイン及び製作。
1975年生まれ。2010年、工房『KOIVU』をスタート。現在、高山の木工技術を支える木工作家さんです。

工房KOIVU

住所:岐阜県高山市国府町瓜巣町1738-1
TEL:0577-62-9373
MAIL:s_0813@orchid.plala.or.jp
HP:http://koivu.minibird.jp