田舎のライフワークとしての山仕事
長尾 嘉市(かいち) さん
岐阜県関市富之保(とみのほ)にて原木しいたけの栽培を行う長尾嘉市さん。4年ほど前に関市役所を早期退職したあと、父から受け継いだ約20haの山に手を入れ始めました。樹齢約20年で直径15cm前後のコナラやクヌギを毎年150本前後伐採。これを90cmほどに切り出してドリルで穴を開け、菌を植え付けていきます。1年半かけて山の中で培養し、その後ビニールハウスでしいたけを発生させます。 伐採後は萌芽(ぼうが)更新といって切り株や根元から新芽が生えてくるため、20年後に再びしいたけ原木として使えるサイズにまで成長するのです。
また、退職後、山仕事に取り組むにあたって岐阜県立森林文化アカデミーの聴講生として1年間講義を受講。そこでの縁から、学生の自主的な実習の場として自らの山林を提供するようになりました。山は資産。だからこそ、勝手に木を伐り倒すことはできません。「これからの日本林業を支えていく子が困っているなら助けたい」と、伐採の練習を希望する生徒がいたときは快く対応。その他、研究の調査場所としても協力するなど柔軟に活用しています。さらに、自らは間伐を行い、運び出した材を「木の駅」※に出荷しています。一般に建築材として適寸といわれる直径14~18cmのスギやヒノキはもちろん、樹齢の高い森林もあるため市場への出荷が今後の課題。樹木が大きくなるほど扱うことが困難になるため、簡単に下せる判断ではありません。
※木の駅とは:里山整備と地域経済の活性化を目指して行われているプロジェクト。山林に放置されている間伐材を「木の駅」に出荷し、その対価として地域通貨を受け取ることができます
山での作業以外にもやるべきことは盛りだくさん。田んぼで米を生産したり、地域のコミュニティづくりに携わったり、趣味で打ったそばを友人たちに振る舞うなど忙しい日々を送っています。「田舎でどう暮らして、いかに楽しむか」。生業の一つとして、享楽の一つとして、今日も山仕事に励んでいます。
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長尾 嘉市
中濃森林組合 理事
岐阜県出身。保護司。「木の駅」inつぼがわ活動組織会員。NPO法人日本平成村理事。