音楽で森を元気に「KOSHIKARI」

皆さんは「カホン」という楽器をご存知でしょうか。南米ペルー発祥の四角い箱状の打楽器で、椅子のようにその箱に座って演奏します。単純な見た目とは裏腹に、多彩な音色を奏でることができ、手軽に演奏ができることから、現在、日本でも人気を集めています。そんな今話題のカホンを「尾鷲ヒノキ」で制作し、音楽を通じて木の魅力を伝え、地域を活気づけている会社があります。今回はオリジナルのカホンを手がける「Handmade Cajon KOSHIKARI(ハンドメイド カホン コシカリ)」代表の越仮裕規さんにお話を伺いました。

「先代が大切に育てた宝を活用して“ものづくり”がしたい」

代表の越仮裕規さん

祖父は林業を営んでおり、私も中学生の頃は木の皮むきや運び出しを手伝っていました。当時はヒノキの間伐材でも高く売れたため、間伐の際は全て手作業で伐り出して、1ヶ月でトラック1台分を運び出していました。それだけで1ヶ月分の生活費が賄えたんです。しかし、今では木材価格の低迷により、良質なヒノキ間伐材でも輸送費の方が高く付き、採算が合わず山の中に伐り捨てられてしまっています。ご先祖様が大切に育てた木が間伐の際に森に放置される現状に心を痛ませていました。

東紀州地域で育つヒノキは「尾鷲ヒノキ」のブランド名で古くから建材として利用されてきました。近年、間伐の際に伐り捨てられる木材もブランド品の尾鷲ヒノキと同じように、手間暇かけて育てられたものです。祖父が大切に育てた木を無駄にしたくない。新しい木材の使い道を考え、付加価値をもっと高めることができれば、まだまだ木を売って生計を立てられるのでは?という思いから1997年に起業しました。それ以降、地元のヒノキ一筋でモノづくりを行い、2009年に木工仲間やミュージシャンとのご縁がきっかけで、カホンの制作を始めるに至りました。

ハンドメイドにこだわり、世界に1つだけのカホンづくりを目指す

カホンが日本に普及してから、様々なメーカーがオリジナルのカホンを作ってきました。その市場のほとんどは合板でボディーを作り、ベニヤ板の打面を貼り、響き線を付ける安価でシンプルなものです。カホンを作り始めた頃、お手本になるカホンは手元に置きませんでした。自分仕様のオリジナルのカホンを制作したいという思いが強く、他者のデザインを真似てしまうのが怖かったためです。ただ、音質の違いを判断できるように楽器店を回っては試奏をひたすらに行いました。

個体差にかなり違いがあるカホンですが、基本的な音作りには以下の3つが重要です。これらの質とバランスがカホンの良し悪しに繋がります。
・ ボディーの素材と厚さ
・ 打面の素材や厚さ
・ 太鼓には無いカホン特有の響き線

カホンのボディーはもちろんヒノキにこだわります。ヒノキは適度な厚さの板にすると心地よく響きます。硬さと柔らかさを兼ね備える絶妙なバランスが“やさしい”音を奏でるのです。また響き線も研究を重ね、独自開発の操作レバーにより響き線のONOFFはもちろん、音色の微調整を簡単に行うことが可能になりました。その他にも良質な音を奏でる工夫を随所に施し、良い音を出すためなら何でもやるという姿勢で日々制作に励んでいます。

ボディーのシェービング(削り出し)。サンダーで帯状に削っています。

カホンだけでなく、他にもヒノキを利用した色々な楽器を作っています。ねこ顏の小さいカホン(トラベルカホン)やスリットドラム、カリンバ、そして地域の里山に生きる命を活用した鹿皮の太鼓を仕込んだカホンの制作なども行っています。

音楽は老若男女問わず楽しむことができます。音楽を通じて性別や世代を超えた交流を可能にするともいえるかもしれません。地域の木材を活用したいという思いをきっかけに制作された“こだわりたっぷり”のカホン。熱い思いが込められたその楽器は地域や木の魅力を語るストーリーテラーになってくれるでしょう。

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Handmade Cajon KOSHIKARI
住所:三重県度会郡大紀町錦681-2
電話番号:0598-73-3538 携帯080-3666-3182
メールアドレス:infokoshikari-cajon.com
ホームページ:https://koshikari-cajon.com/