木みの名は~飛騨五木の語源~

ものの名前の多くには由来があります。それは樹木の名前にも。そこで、今回は“飛騨五木”と呼ばれるヒノキ、スギ、ケヤキ、クリ、ヒメコマツの語源をご紹介します!

ヒノキ

ヒノキは人工林によく植えられている常緑針葉樹です。一般的に火がつきやすいことから “火の木”が語源という説が言われてきました。しかし、ヒノキのヒと火のヒでは、万葉仮名*の仮名遣い表記が異なっていたことから音韻学的には成り立たないそうです。その他には日の木(ヒノキ)から来たのではないかと言われています。『日本書紀』ではヒノキは宮殿に使いなさいと言われており、昔から尊い木とされてきました。そのことから、最高のものを表す「日」*から“日の木”または、不思議な力を意味する“霊(ひ)の木”から転じ、ヒノキになったという説もあります。

*「万葉仮名」:漢字の表す意味とは関係なく、漢字の音や訓をかりて国語の音を表記するのに用いた漢字。ひらがな、カタカナが使われる以前によく使用されていました。

*「日」:古来では日は太陽を表し最高のものを指します。

スギ


スギはヒノキと同じく人工林によく植えられている常緑針葉樹。スギは幹がっすぐ上に伸びる木なので直木(スクキ)からその名が来たのだそうです。一方で、かの有名な本居宣長*は『古事記伝』のなかでスギは進木(スギ)の意味だと言いました。スギはわきの方には広がって茂らず、ただっすぐに育つことからその名が来ていると考えていたようです。どちらにせよスギの成長の様子からその名前が付けられたのは間違いなさそうです。

*「本居宣長」:江戸時代の国学者

ケヤキ


ケヤキは“けやけき木”から来ているのではないかと言われています。けやけきとは際立って目立っている様子、すばらしいなどといった意味の古語です。どうやら、ケヤキを木目が美しいことからけやけき木と呼ぶようになり、そこからケヤキに転じたのだとか。一方で、ケヤキという呼び名は比較的新しく室町時代前後に呼ばれるようになったものですそれより以前は槻(ツキ)と呼ばれていました。槻は強い木(つよいき)もしくは、強木(つよき)が由来だそうです。

クリ


一般的に、クリは果皮の色が黒いことからクロが転じてクリというようになったと言われています。または、朝鮮語のKul(クル)が由来とも。日本にある同じ種類のクリが古くから朝鮮の方でも自生していることもこの説の信憑性を高めているようです。

ヒメコマツ


ヒメコマツの別名はゴヨウマツです。1か所から針のような形をした5つの葉が生え出ることからその名前が付きました。ヒメは接頭語で小さいことを表します。ヒメコマツは葉が短く小ぶりなため、そのように呼ばれていたのでしょう。
マツの語源はどうでしょうか。マツの語源も諸説あります。久しく齢を保つことから「たもつ」が転じて「まつ」になったという説、葉がまつげに似ているから「まつ」、神が木に宿るのを「待つ」など数多くの説があります

いかがでしたでしょうか?木の名前の由来には様々な理由があることがわかりました。あなたの好きな樹木にもワクワクするような語源が眠っているかもしれません。

参考文献
深津正、小林義雄(1985)『木の名の由来』 太平社

当サイトで紹介している内容は、一般的な説に基づいています。この他にも諸説あり、地域や時代によって異なる場合があります