樹木の“一番”を探る!

樹木の“一番”を考えたことはありますか?例えば、世界で一番高い木はアメリカのカリフォルニア州レッドウッド国立公園にあります。その樹木の名は「レッドウッド (セコイア) *」といい、高さはなんと“115m”にもなります!世界最大の動物であるシロナガスクジラの体長がおよそ30mですから、その4倍近い大きさの樹木ということになります!ちなみに、幹の体積が一番大きいのはアメリカのセコイア国立公園にある「ジャイアントセコイア*」。その体積はおよそ1,487㎥、その直径は11mにまでおよび、幹の重さは2,000トンにもなるそうです!
下の写真はアメリカのジャイアントセコイアでつくられたトンネル。

Tunnel Tree, Old Big Oak Flat Rd by kawanet 写真:Yusuke Kawasaki 出典:http://www.igosso.net/se.cgi?q=%E3%82%BB%E3%82%B3%E3%82%A4%E3%82%A2&sa=%E6%A4%9C%E7%B4%A2&lid=1&lia=1&lib=1&lic=1より引用(20180621アクセス)

*「レッドウッド」:別名セコイア、コーストレッドウッドなどと呼ぶ。直径は7m、高さは70m~115mほど。北カリフォルニアからオレゴンの海岸にのみに生育する針葉樹。
*「ジャイアントセコイア」:別名セコイアデンドロン。ヒノキ科セコイアデンドロン属の針葉樹。アメリカ西海岸にあるシエラネヴァダ山脈西斜面の高地に自生。

世界で一番高い木はアメリカのセコイアでした。では、日本で一番高い木はいったい何か少し気になりませんか?日本の一番は京都の左京区にあるスギです。林野庁近畿中国森林管理局の調査結果によると、こちらのスギは「峰定寺(ぶじょうじ)」の御神木である“花脊(はなせ)の三本スギ”のうちの一本で、樹高は62.3mにもなるのだとか。国内にあるため気軽に見に行けそうですね。

重い木?軽い木?

木の重さを比べてみたことはありますか?世界で一番重い木は、中央アメリカに分布している「リグナムバイタ」です。熱帯産の広葉樹で気乾比重*はおよそ1.24。それはなんと水に沈んでしまう重さであることを意味しています。一般的に水に浮く種類の木材が多いですが、浮かばない木も存在しています。重いということはそれだけ硬いということでもあります。だからこそ用途としては、船舶用部品や滑車、ベアリングなどがあります。
*「気乾比重」:乾燥させた木材の重さと同じ体積の水の重さを比べた数値のこと

対照的に世界一軽い木は「バルサ」です。バルサ材という言葉を聞いたことはないですか?気乾比重はおおよそ0.16以下しかありません(数値は木材工学辞典より)。この木材は、ナイフやカッターで簡単にカットできるため加工しやすく、模型用としてよく用いられています。また、浮力があるのも特徴で、ルアーに使用されることもあります。釣り好きの方でバルサ材を使ったルアーのハンドメイドに挑戦されている方もいるようです。

模型に使用されているバルサ材

世界の重い木、軽い木を見てきました。では、国産材ではどうでしょうか。
イスノキや八重山黒檀(コクタン)、そしてウバメガシにオノオレカンバを加えた4種類が国内で最も重い木と言われています。というのも個体差があるためなかなか一番が決められないらしいのです。

そのような議論が起こる一方で、イスノキが最も重くて硬いという文献をよく目にします。そのイスノキですが、椅子に使われるからイスノキという名前になったのではないかと思っていました。しかし、実際はそうではなく、由来は定かでないそうです。イスノキでできた椅子に私は出会ったことがないので座り心地を試してみたいものです。用途としてはこの硬い特性から木刀、ソロバン珠(たま)、三味線などの棹(さお)に使われています。

日本最軽量の樹木は決まっています!それは、「桐(キリ)」です。木材は昔から様々な用途で活躍してきました。耐湿性に優れているので収納箱としての利用が多かったようです。皆さんが良く使っているものだとタンスなどによく使用されています。その他にも琴や琵琶などの楽器や下駄、羽子板など幅広く用いられます。

桐のタンス

樹木の“一番”をご紹介してきました。樹木は多種多様な個性があって面白いですよね。樹木はまだまだ個性的な仲間たちで溢れています。あなたにとって一番の樹木はなんでしょうか?

参考文献)
日本木材学会・物理・工学編編集委員会(1985)『木材科学実験書Ⅰ.物理・工学編』中外産業調査会
ニック・ギブス(2005)『木材活用ハンドブック』三調出版
「地球の歩き方」編集室(2015)『地球の歩き方 アメリカの国立公園20152016年版』ダイヤモンド・ビッグ社
西川栄明(2016)『樹木と木材の図鑑日本の有用種101』創元社